2022-11-28

2022-23 WEリーグ第4節 S広島R 1 − 1 I神戸

 終了直前に勝点3が掌中からこぼれ落ちてしまった。立花葉のドリブルによるペナルティエリアへの侵入から得たPKによる先制点をレジーナは守り切ることができなかった。

 89分のこのシーン、レジーナの守備に大きなミスがあったようには思えない。強いて言えば水野に対する警戒が薄くなっており、完全なフリーでボールを持たせてしまったというくらいか。しかしそれもすぐに立花が抑える態勢に入ったので水野の縦への仕掛けには十分対応できていた。ゴールまでは遠いので水野は縦にボールを運んでくるというのが立花の予測だったと思うが、水野は時間がないことを意識してボールを運ばずそのままクロスを入れてきた。立花としては裏を掻かれた形ではある。しかし普通ならこのクロスは成功しない。普通ならというのは、非凡なストライカーがいないならという意味だ。しかしあいにくINAC神戸には田中美南がいるのである。

 レジーナのGK木稲瑠那は田中が落ちてくるボールに間に合うと見てニアを警戒した。ここまで田中にニアへ何本も打たれているからだろう。実際タイミング的には間に合ったが田中の足はボールの軌道を変えることなくファー側へボールは流れゴールとなった。田中がGKの動きを見てボールに触れない選択をしたのかどうかはわからない。それは本人もよくわからないかもしれないようなそういう微妙なシーンだった。
 もちろんゴールを割られた木稲に責められるべきミスがあったわけではない。だがそこに田中美南が走り込んできていなかったら水野が入れたボールは木稲の手で無難に弾かれたことだろう。ストライカーの気合、実績、自信その他諸々の要素が総合した結果、攻守にわずかな差が生じた。


 ここまでなら前節対浦和戦の結論と大差はない。相手がやはり少しだけ強いのだということである。もちろんそれは誰に訊いてもそうなのだが、しかし前節と違って今回は引き分けである。
 勝ちを逃した選手たちは悔しそうで、ちょっぴり俯きがちに見えたが、強い強いINAC神戸、去年のチャンピオン神戸から勝点1を奪い取ったのだ。そこに注目したい。

 順序が逆になるが前述のとおり先制点は広島だった。62分、ボールを奪取したあとさらにドリブルで突破した上野真実からボールを預かりPEに入っていった立花を神戸のCB竹重杏歌理が倒してしまう。このPKを上野が決めてレジーナは先制に成功する。竹重は去年、リーグ戦の中でレギュラーを獲得してINACの鉄壁守備を実現した立役者だ。歳は19とまだ若いが実力はリーグ屈指と言って過言ではない。その竹重の守備を立花はわずかに上回った。

 実はこの結果にはそれに先立つ伏線があった。このシーンの少し前の56分、神戸の髙瀬愛美にイエローが出たあとのFKを小川愛が出し塩田満彩から縦に入ったボールを受けた立花がゴールライン際から突破を敢行。まずSB水野をかわした立花は止めに来たCB竹重をも抜き去り、さらに出てきたCB三宅史織まで抜いて中央にマイナスのクロスを出したのである。このプレーが神戸守備陣の度肝を抜きその心胆を寒からしめたことは疑いない。そして次の映像の'9:00からを見ていただきたい。ハームタイムで中村伸監督が立花葉その人に「勝負していい」「もうひとチャレンジできる」と指示を出しているのである。

 WEリーグが開幕して以来初めてスターティングメンバーに選ばれた立花はこの言葉でさらに自信を持っただろう。そしてチェレンジしたのである。この立花の潑剌としたチャレンジに一度やられてしまった竹重は二度目は絶対に負けまいとしてつい冷静さを欠いてしまった。勝負はほんとうに微妙なところで決着するものである。

 こうしてサンフレッチェ広島レジーナはINAC神戸と引き分けたのだ。まさに1対1なのだ。

 そして次節は苦手のベレーザである。ここでどういう試合ができるか、刮目してみようではないか。

■立花葉
 文句なく、この試合のヒロインだった。できれば永遠にこのままでいて欲しい。

■上野真実
 PKはミスキックだったが名手山下杏也加をして逆に飛ばせたあたりは再び爆発する予兆とみると頼もしい気がする。素晴らしいプレーがたくさん見られた。

■塩田満彩
 攻守に渡って安定感がある。謎なプレーは少なくなってきた。ただハンドを取られないように手の使い方は気をつけてほしい。

■近賀ゆかり
 先発なので少し不安を覚えたが始まってみるとその訳もわかった。さすがというほかない。が、他の選手には彼女を出させないようにがんばってほしいのだ。

2022-11-12

2022-23 WEリーグ第3節 浦和 2 − 1 S広島R

 試合を観終わったらすぐにこのブログを書こうと思っていたのだが、それができなかった。それだけこの試合は多くのことを物語っていた試合だった。想いは複雑である。

 浦和と広島、この両チームには残念ながらチーム力に差がある。ほとんどすべての選手が代表格、現役代表もしくは代表経験者である浦和に対して、広島ではそう言える選手が何人いるか。そうした戦力差では明らかに浦和のほうが強い。そしてその差の通りの試合結果となった。

 ではレジーナには勝ち目がなかったのか、といえばそうではない。少なくともレジーナの選手たちは気持ちの上で負けてはいなかった。だから終始苦しい展開ながらも一方的なスコアにはならなかった。実際、佐山桃子がファウルを取られたあのプレーさえなければ引き分けに終わり、勝点を分け合ったかもしれないのだ。


 では、この敗戦の原因は佐山にあるのかというと、そうではない。佐山のスライディングタックルは確かにボールに行っていた。ただ運の悪いことにボールは清家貴子の右足に当たり足元に残った状態になって清家が倒れる形になった。スライディングと同時にボールが外側に飛び出していればおそらくファウルにはならずPKを与えることもなかっただろう。しかし問題なのは、スライディングタックルに行った判断だ。清家がボールを受けペナルティエリアに侵入してきたときから佐山は清家にピッタリとついて並走しており、あの地点ではもはや角度がなくなっていたので、清家にシュートチャンスはほとんどなくなっていた。だからリスクの高いスライディングタックルでボールを弾く必要はなかったのだ。

 そうなるとますます佐山のミスだということになりそうだが、まさにこここそが彼我の力の差にほかならない。ゴールラインが近づいてしまって清家はおそらく迷っただろう。切り返してシュートを狙うか、それともシュートは諦めてコーナーキックを取りに行くか、あるいは後の味方にパスを出すか、どうしようか、と。そしてその迷いの瞬間を佐山は見逃さなかった。すかさずスライディングを敢行した。その瞬時の判断は見事なものだった。そしてチャンスと見たらチャレンジする意欲も素晴らしい。
 ただ、もし攻守が逆だったとしたら浦和のCBは同じようにスライディングをしただろうか。おそらくしていないのではないか。なぜならPKを与える危険性が高いからである。この差が浦和と広島の厳然たる力量差にほかならない。技術的な問題はほとんどない。気持ちの上でも負けてはいない。しかし最後のところで冷静な判断ができるかどうか、そういうわずかな差。ほんとうにそれは紙一重の差かもしれない。

 しかしこの差を埋めるのは一朝一夕ではできない。おそらく何年も彼女たちの背中を追い続け、努力を重ねなければならない。強化をし続けなければならない。そして5年後10年後に彼女たちと肩を並べるところまで到達できるかどうかだ。その長い旅路がいま始まった、あらためてそんな気がしたのである。

2022-10-30

2022-23 WEリーグ第2節 S広島R 1− 2 N相模原

 WEリーグの2年目は混戦の兆しを見せている。
 ノジマステラ相模原の出来が素晴らしかった。昨シーズン10位に沈んだチームとはとても思えない。ボールに対する寄せが速くしかもパワフルで球際が強い。パスの精度が高く、ボールのスピードも速い。広島は開始から30分間ほとんど何もさせてもらえなかった。
 相模原がこの試合で見せたパフォーマンスを安定的に維持できるのなら、INAC、レッズ、ベレーザからもある程度勝点を奪えるに違いない。

 この相模原と似たような印象を与えるのがASエルフェン埼玉だ。今節ではホームに新潟を迎えたが、やはり前半は新潟にほとんど攻撃の時間を与えていなかった。
 そして注目するべきはAC長野パルセイロLである。こちらは完全なハイプレス戦術。数少ないチャンスをきっちり決めたマイナビ仙台に勝点3を持って帰られてしまったものの、試合内容は完全に長野のペースで終始していた。フィニッシュのところの精度と強さが改善されれば攻撃力、得点力は相当なものになるはずで、それこそトップ3の一角を崩すことになるかもしれない。本当はレジーナにこのサッカーを先に実現してほしかったが、就任初年度にして早くもここまで作り上げてきている田代監督の手腕を褒めるべきなのだろうか。

 さて、こうした状況の中、早くも黄色信号が灯ったかに思える、レジーナ、どうする。


■塩田満彩
 素晴らしかった。相手に二人がかりで寄せられても慌てることなく対応したどころか、足技を繰り出して何度もプレスを剥がしていた。このあとトップ3との戦いになるが、今日のように自信を持ってプレーしてほしい。彼女は右サイドではプレーできないだろうか。

2022-10-25

2022-23 WEリーグ第1節 S広島R 2−1 千葉L

 サッカーはメンタルがモノをいう。まさにそういう試合だった。
開始1分30秒、千葉のコーナーキックのこぼれを瀧澤千聖が拾い左サイドで運び上がった。そして前線中央に走り込んでいた中嶋淑乃を狙ってクロスをあげる。結果、中嶋には当たらなかったが、このプレーには勢いがあった。これを見て、今日は負けない、そう思った。
 試合の入りは良くない。開始早々にコーナキックを取られ、3分には鴨川実歩にバーを叩かれるシュートを浴びてしまった。押し込まれ、再三ピンチを招くそんな立ち上がりではあったが、負ける気がしない。なぜなんだろう。しばらく観ていて腑に落ちた。選手たちが皆チャレンジをしているのである。球際もスルーパスも積極的にチェレンジしている。ロングボールも蹴らされているのではなく狙って蹴っている。ただ、うまくいっている、とは言い難い。縦パスは通らず、ボール奪取は成功せず、ロングボールはターゲットに収まらない。去年はホームでなかなか勝てなかった。選手たちの胸にはその苦しい思いがある。開幕戦がホーム開催となれば緊張するのはやむを得ない。みんな大小いろいろなミスをしている。その点ではのびのびとプレーしている千葉のほうが遥かにプレーの精度が高い。しかしそれでも、選手たちは気後れせずに粘り強くやっていたのだ。この気持ちが観る者に希望を与えてくれたのだと思う。
 37分コーナーキックから失点してしまう。それでも、これで終わりではない、いやむしろ面白くなった、そんな気さえした。そして後半開始直後の中嶋の劇的な得点が生じる。前半、出来が悪いながらも諦めずにチャレンジし続けた前向きな気持ちが生んだ得点だったように思う。

 レジーナは不思議なチームである。これだけプレー精度が悪いと普通は勝てないはずだと思うのだが、終わってみれば逆転勝利である。もちろん際どい勝ち方で、辛うじて拾った勝利である。スタッツを見る限りではシュート数は千葉の9に対してレジーナは5。CKは千葉の5に対しわずかに1。終始押し込まれた展開だったのかという数字である。だが試合を見返してみると前半も後半もけっこうな時間攻めている。ワントップの谷口木乃実には少なくとも3回は決定機があったし、上野真実にもチャンスがあった。これらの決定機に決められなかったのは仕方がない。けれど少なくともシュートが打てていればスタッツの数字から受ける印象もだいぶ変わったものになったはずだ。

 千葉は昨年4位の強豪。この強い相手に対して少々出来が悪くても勝ちをもぎ取ることができる。このチームにはそういう不思議なポテンシャルがある。それを感じることでワクワクできるから、レジーナにはファンが多いのだろう。プレーの精度が上がり、さらにチームがまとまってきたとき、このチームはどこまで行けるのだろうか。

・瀧澤千聖
 さすがはAC長野の背番号10である。カップ戦のときの借りてきた猫のような感じはいったいなんだったのか。開幕戦でしっかりとスタメンを勝ち取ったばかりでなく、チームを引っ張るプレーぶりは見事というほかない。レジーナに来てくれて本当にありがとう。

・中嶋淑乃
 POMは瀧澤に譲ったもののあのゴールは値千金。瀧澤と二人で10点など目標が低すぎる。今年は思い切り爆発してほしい。またいつものとおり守備での貢献がやはり光っている。84分相手GKが素早いスローで速攻態勢に入った瞬間スプリントを始めてプレスに戻り右サイドまで追いかけて千葉のカウンタを潰した守備は感動的だった。

・齋原みず稀
 プレーも正確だったしアイディアもあり判断も速かった。持ち味は出せていた。しかし今求められているのはそのレベルではないことに留意してほしい。谷口をスタメンから引きずり降ろさなければならないのだ。より激しくハイプレスに挑み、ポストプレーを磨いて欲しい。じっくりやっている時間はない。

・佐山桃子、中村楓
 この二人がいなければ負けていた。特に佐山は攻撃面でも効いていた。呉屋絵理子や森宙舞はここをこじ開けてこそ、なので全力で頑張ってほしい。

・増矢理花
 まだ試合勘が戻っていないのか。テンポが周りと少し違うような気がする。もちろん実力はこんなものではないはず。次節に期待したい。

・塩田満彩
 前半はフィードがあまり成功していなかった印象がある。そこは修正してほしいが、気合いの入った守備は観ていて気持ちが良かった。なにはともあれ開幕スタメンでフル出場を果たした。おめでとう。

・福元美穂
 自分のミスから大ピンチになったが、そこで守り切ろうとする姿には鬼気迫るものがあった。この局面もメンタルで相手を上回った結果のセーブだったと思う。控えの3選手は早くこの名キーパーに引導を渡して自分の時代を引き寄せろ。

2022-09-25

2022-23 WEリーグカップ 第6節 I神戸 2−1 S広島R

  この試合、レジーナについては言えることが少ない。ただひとつはっきりとわかったことがあるのでそれを書いておこうと思う。
 神戸の重鎮選手は誰かと問えば多くのひとがGK山下杏也加の名を挙げるであろう。なんといっても彼女はWEリーグの初代MVPであり、A代表でも不動の守護神である。もちろんその実力に疑いを差し挟む余地はない。
 彼女は入場時に上着を肩に引っ掛ける一風変わったスタイルで出てくる。この武張ったアウトロースタイルは強い彼女の強さの現れであるように見える。しかし本当の彼女はとても気が小さい。ピンチになるとドギマギしてしまうような気の弱い女の子なのだ。だから彼女は本当の自分=弱い自分が絶対に表に出てこないように自分自身をなんとか鼓舞しようとしてアウトローの真似などしているのである。自分は強いのだと自己暗示をかけ、周囲にもそうアピールすることで自ら退路を断ち自分を追い詰める。ここまでのことができる者は少ないだろう。他人には決して言えないそういう不断の努力が実を結んで女子サッカー界NO.1GKの地位を得るまでになった。まことに見事というほかない。



 30分の上野真実のゴールシーンを観ていただきたい。広島側左サイドから木崎あおいがワントップの谷口木乃実をめがけた長いパスを出す。しかしボールは谷口をマークしていた三宅史織が拾いGK山下にバックパスする。このボールがが少しだけ緩くなったので走ってきた谷口はスピードを落とさずそのまま山下まで追ってゆく。ここで名手山下にミスが出る。クリアしたつもりのボールがあろうことかフリーでいた上野の足元へ行ってしまったのだ。
 谷口のプレスはさほど強烈なものではなかった。谷口はボールに間に合わないことがわかった時点でスピードを緩めており、体をぶつけてでもボールを奪ってやろうという気迫は感じられない。したがってタイミング的にもさほど際どいものではなく山下にはいろいろな選択肢があったはずだ。大きく蹴り出すのもよし、トラップして谷口から離れるのもよし、フリーになっている三宅に戻してもよかった。でも彼女は慌ててしまう。あの瞬間もう彼女の視野には三宅の姿はなかったろうし、広島の選手がどこにいるかもわからなくなっていたのであろう。気の弱い本当の自分が表に出てきてしまったのである。
 思い返せば昨年度の2021-22WEリーグ第11節でもやはり谷口のプレスに対して山下がミスをするシーンがあった。その時は失点にはつながらなかったもののリーグ戦で初めての負け試合となってしまっている。いうまでもなくサッカーはメンタルスポーツ。日本一の守護神が動揺すればチーム全体が浮足立つ。

 INAC神戸レオネッサの最大のウィークポイントはGK山下杏也加である。

2022-09-23

2022-23 WEリーグカップ 第5節 S広島R 1ー1 千葉L

 前半は完全に千葉のペース。レジーナは絶望感を覚えるほどに攻撃が機能しない。ビルドアップはさせてもらえず、中盤にボールが渡っても前線までは届かずすぐに最終ラインにボールが戻ってくる。当然ながらそこも安心できる場所ではなく、ひやひやはらはらの連続で結局はロングボールを蹴り出す以外にできることがほとんどなかった。
 選手たちはどう思っただろう。千葉の選手たちは、今日は楽勝だ、きっとそう思ったに違いない。45分で1点しか入らなかったが、なにせまったくピンチにならないわけだからその1点だけで十分だとさえ思えたかもしれない。
 対するレジーナの選手たちは昨年シーズンの勝てなかった頃の気分が胸をよぎったりしていたのではないだろうか。

 しかし不思議なものである。後半に入ると少しずつ広島が前がかりになり始める。60分を過ぎた頃からは川島のスルーパスから決定機が生まれ中嶋の突破から木崎が走り込んで合わせるチャンスが生まれたりした。千葉のディフェンスはそれでも相変わらず堅かった。とはいえ前半のロングボールは影をひそめ、セカンドボールも広島が拾うことが多くなったのだ。
この変化はどう捉えたらよいのだろう。千葉の選手たちの足が止まったのだろうか。
 確かに前半、千葉の選手たちはよく走った。それがなければあれだけのプレスを効かせることはできない。しかしその分レジーナの選手たちだって追いまくられるように苦しい走りをしなければならなかったのだ。つまり運動量に大差はない。


 今期、男子チームのほうは後半の得点力の高さが際立っているが、これにはひとつ明白な理由を挙げることができる。それはハイプレスを徹底することで相手の守備的選手に強いストレスを与え続け、それが時間経過とともに集中力の持続を難しくするのである。それはおそらく肉体的疲労とは別のものなのだ。だから両チームの運動量に大差はなくても後半の攻防にその精神的疲労が如実に反映しているのである。
 だがそれが今回発生した、というわけではない。谷口木乃実はここ数試合では最も強く守備に行っていたし右の川島はるなもトップ下の上野真実もプレスに行く姿勢を見せてはいた。が、まだまだ強度も連動も足りておらず相手に恐怖の硬直を起こさせるにはほど遠かった。さらには最も強度の高いプレスができる松原志歩がいないのだから千葉のCBはさぞかし楽だったはずなのだ。

 そういうわけで、前半と後半の落差がどうにも納得できないのであるが、これがサッカーというスポーツの不思議なところなのかもしれない。

 今回は印象深かった選手にのみコメントしたい。

■谷口木乃実
 同点ゴールは見事だった。久々によくがんばったご褒美に神様があのゴールをくれたのかもしれない。得点できるかどうかはともかくとして毎試合今回のようなパフォーマンスが見られると嬉しい。

■中嶋淑乃
 彼女の美質のひとつが安定性にあるのだと痛感した。個々の選手もチーム全体もとにかく波が大きい中にあってその安定性はひときわ輝く。コンディションの維持にはくれぐれも注意してほしい。

■川島はるな
 また真っ先に交代になったが、何か理由があるのだろうか。彼女はスロースターターの典型だと思うのだ。今回もいつものように試合の入りが悪く、今日はダメかと思って見ていると少しずつ良くなってくる。20分くらいからミスが減り始め60分くらいからキレが格段に良くなり破壊力が増してきて尻上がりに調子が良くなる。前の試合も最後に逆転弾を叩き込んだわけだし、よしこれからだ、とおもっていると交代を出されてしまった。本当にもったいない。スロースターターなのは緊張癖なのかアップが足りないのかわからないが、この点、本人にも監督にもなんとか善処をお願いしたい。

  61:38 塩田から出たパスが強めなのをみてトラップをフェイクにし未来の自分のために敢えてボールに触らずに相手を抜いてゆくプレーをぜひご覧いただきたい。こういうプレーを連発する選手をあっさりと下げてしまう意図はどこにあるのか、目下レジーナ最大の謎となっている。

■塩田満彩
 中村楓になにがあったのかわからないが、無事代役が務まることを証明できた。たまに謎のプレーがあるが、それが致命的にならないなら、それも愛嬌があって魅力のひとつという気がしないでもない。  なんとなく彼女にCFをやらせてみたい気がする。破壊力抜群だったりしないだろうか。

■佐山桃子
 何度も書いているが成長著しいので続けて欲しい。ただたまになぜかパスが弱過ぎて大ピンチになるのでそこだけは改善してもらいたい。

■藤田七海
 アップの時の登場の仕方とか初々しくて嬉しくなった。ようやくベンチ入りまで漕ぎつけてきた感じだがこの勢いで福元美穂を乗り越えてほしい。

2022-09-11

WEリーグカップ第4節 N相模原 2−2 S広島R

 サッカーには劇的な試合というものが珍しくない。この試合もまさに劇的。84分間お互いに攻め手を欠いたというべきかお互いに良く守ったというべきか、ともかくも得点が生まれない拮抗した内容だった。
 しかし84分にステラ藤原加奈の見事なミドルシュートが炸裂したのを皮切りに最後の10分間で双方のチームに2ゴールづつが入るというそれまでとは打って変わった驚きの展開となった。

 とりわけ最後のステラのコーナーキックからの得点は不思議というほかはなかった。両チームの選手たちがGK福元美穂の前に密集する中、杉田亜未が蹴ったボールは約30度の角度でそのどまんなかに落ちてくる。ステラの選手たちはそのボールを押し込もうと思ったしレジーナの選手たちは弾き出そうと思った。それは確かだろう。しかし結果的には誰もそのボールに触ることができなかったのだ。まるでなにかの意志を持った生命体であるかのようにボールは地面に落ち、弾んでゴールの中に入っていった。杉田亜未のキックが素晴らしかった。それは間違えないのだが、10数人が密集しているにも関わらず誰もボールに触れなかったのはまことに不思議である。 
 



 ただ、こういう不思議な失点があったから勝てなかった、と言えるかというとそうではない。決定的なシーンが2つあった。
 ひとつめは28分、平野優花に広島側右サイドを抜け出されたシーン。たまたま平野がトラップミスをしてくれたので松原優菜が対応に間に合い事なきを得たが、平野のミスがなければGKとの1対1になるところだった。
 ふたつめは、左サイドを松本茉奈加に抜け出され上げられたクロスを中央で杉田亜未に頭で合わせられたシーン。数的不利はなかったにもかかわらず杉田は完全なフリーで、十分に首を振ってヘディングしていた。少し距離があったし正面でもあったのでGK福元もキャッチできたが、もしグラウンダーのクロスだったら強烈なシュートをもろに食らっただろう。
 いずれもショートカウンタを発動された形であるが、こうした守備破綻をなんとかしないといくら点をとっても勝てないということになってしまう。
 最後のワンプレーで不思議なことが起こったのは偶然ではなくて、サッカーの神様が勝つべき内容ではなかったぞと勝点3を取り上げたのかもしれない、そんな気がした。


GK福元美穂5.0守備連係の不備を修正していくことができるか注目したい。
RCB佐山桃子5.559分のピンチは裏返されてからマークの受渡しに失敗してのこと。
LCB中村楓5.0佐山が上がった先を把握していれば杉田をフリーにはさせなかったはず。
RSB松原優菜5.5地味ながら攻守に良い貢献ができている。もっと自信を持ってほしい。
LSB木崎あおい5.0気の所為なら良いのだが、溌剌とした感じがないのでやはり心配だ。
DMF小川愛5.5彼女の展開力はもはや欠かせない。怪我だけは気をつけてほしい。
DMF柳瀬楓菜6.0なんかおしゃれになってきたのか。その余裕でいけばゴールも決まる。
RWG川島はるな6.5守備面での貢献が素晴らしかった。シュートがすべて枠にいけば凄いことになる。
LWG瀧澤千聖5.5今回は危険な匂いがしていた。遠慮はいらないので暴れまくってほしい。
OMF松原志歩6.0やればやっただけの成果が得られている。続けていれば大きなチャンスが来る。
CFW谷口木乃実5.0惜しいシュートがあったとはいえやはりプレーが単純で淡白過ぎる。
OMF齋原みず稀6.0持ち味を発揮することはできていた。もっと速くもっと激しくいけ。
RSB島袋奈美恵5.5出れば必ず活躍してくれている。先発で観たいものだが。
LWG立花葉6.5持ち前のメンタルの強さで決めたゴールだった。チームを救った。