2022-05-07

谷口木乃実の成長

 このチームの特徴は「波」なのではないか、と思う。 

 第1節の対エルフェン戦は鮮やかな勝ちっぷりで世間を驚かせた。しかし第2節、まだ動きの良くない仙台に敗れるとそのあとさっぱり精彩がない。やはり増矢理花が戦線離脱してしまったダメージが大きすぎるのかと思いきや、第5節で昨年のチャンピオン浦和に逆転勝利してまた大興奮。

 これで波に乗るかと思ったが、そのあとまた勝てなくなり、第9節のAC長野戦ではアディショナルタイム最後の30秒で2点を失い勝点3が0になった。 

 その後のリーグ戦はいいところなく前半戦が終了。もうダメかと思ったが意外にも12月24日の皇后杯4回戦で波に乗る仙台に快勝してくれたので、リーグの後半戦に期待が膨らんで年を越した。 

 しかし後半戦が始まってみるとチームが壊れたかと思うようなありさまで4連敗。これ以上負けるとほんとうにチームが壊れてしまって、シーズン終了を待たずに監督解任もあり得るかと青ざめて臨んだ第17節相模原戦だったが、今度は胸がすくような完勝。


  続く第18節は前半戦で大敗を喫した相手大宮アルディージャVENTUS。どうなることかと思われたが、またまた快勝。ようやくホーム初勝利の歓喜。 

 このジェットコースタのようなアップダウンぶりは増矢理花が第1節で大ケガをしていなくてもきっとたいして変わらなかっただろう。やはりチームが若いのだ。

 選手の平均年齢ではどうなのかわからないが、チームとしては結成足掛け2年目、文字通りゼロからのチーム。だから個々の選手たちもそれぞれ存分に個性を発揮できる環境なのかもしれない。選手たちの個性が感じられるその姿は観ていて楽しい。心が踊る。いままで広島に関心のなかった人たちもレジーナを観るといつのまにか好きになるようだ。

 川島はるなのファンタジックなチャンスメーク、中嶋淑乃の独特なドリブル、小川愛のキックや展開力、立花葉のスピード、島袋奈美恵の躍動感、上野真実の落ち着き払った動き、などなど挙げていけばきりがない。こうした個性の発露がうまく噛み合った時、波は増幅して驚くほどの高さになる。けれども波には谷がある。それが自ずと成績に反映してくるのにちがいない。

 

 しかし前半戦では、こうした個性豊かな選手たちの中でひとり地味な存在がいた。谷口木乃実である。

 開幕以来中村伸監督はこの選手を重用してきたが、わたしにはその真意が解らなかった。その良さが掴めない。結果もさほどは残せていない。率直にいうと、いないよりはいい、くらいにしか思えなかったし、この程度なら他の選手を出させてあげれば良いのにとさえ思っていた。 

 ところが、である。チーム崩壊の淵にあった第17節相模原戦での彼女は違った。ボールを持てば勝負を仕掛けて、しかもその勝負に負けていない。ポストプレーも巧さを見せ中盤へのサポートも効果的だった。意外だった。新しい発見をしたと思った。 

 そうしたら第18節ホームの大宮戦での爆発である。半年前の地味すぎるFWの背番号13は別な選手に交代したのかと思うほどの変わりようであった。DAZNの解説を担当した大竹七未氏をして「なでしこJAPANの監督に観て欲しい」と言わしめるこの成長、これがサンフレッチェ広島レジーナというチームが持つ底力なのだろうと思う。後半戦開始からの4連敗はその産みの苦しみだったか。 

 谷口木乃実と同じタイミングでブレークした選手がもうひとりいる。その選手についてはまた別に書きたいが、この成長力こそがこのチームを高みに導くはずだ。今シーズンはまだ固まらないグラウンドの上で若いエネルギーがダイナミックに波打った。それが不安定な成績にもつながった。しかしこのチームは巨大なものを生み出しつつある、谷口木乃実の成長をみてそれを確信するのである。

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