この試合、レジーナについては言えることが少ない。ただひとつはっきりとわかったことがあるのでそれを書いておこうと思う。
神戸の重鎮選手は誰かと問えば多くのひとがGK山下杏也加の名を挙げるであろう。なんといっても彼女はWEリーグの初代MVPであり、A代表でも不動の守護神である。もちろんその実力に疑いを差し挟む余地はない。
彼女は入場時に上着を肩に引っ掛ける一風変わったスタイルで出てくる。この武張ったアウトロースタイルは強い彼女の強さの現れであるように見える。しかし本当の彼女はとても気が小さい。ピンチになるとドギマギしてしまうような気の弱い女の子なのだ。だから彼女は本当の自分=弱い自分が絶対に表に出てこないように自分自身をなんとか鼓舞しようとしてアウトローの真似などしているのである。自分は強いのだと自己暗示をかけ、周囲にもそうアピールすることで自ら退路を断ち自分を追い詰める。ここまでのことができる者は少ないだろう。他人には決して言えないそういう不断の努力が実を結んで女子サッカー界NO.1GKの地位を得るまでになった。まことに見事というほかない。
30分の上野真実のゴールシーンを観ていただきたい。広島側左サイドから木崎あおいがワントップの谷口木乃実をめがけた長いパスを出す。しかしボールは谷口をマークしていた三宅史織が拾いGK山下にバックパスする。このボールがが少しだけ緩くなったので走ってきた谷口はスピードを落とさずそのまま山下まで追ってゆく。ここで名手山下にミスが出る。クリアしたつもりのボールがあろうことかフリーでいた上野の足元へ行ってしまったのだ。
谷口のプレスはさほど強烈なものではなかった。谷口はボールに間に合わないことがわかった時点でスピードを緩めており、体をぶつけてでもボールを奪ってやろうという気迫は感じられない。したがってタイミング的にもさほど際どいものではなく山下にはいろいろな選択肢があったはずだ。大きく蹴り出すのもよし、トラップして谷口から離れるのもよし、フリーになっている三宅に戻してもよかった。でも彼女は慌ててしまう。あの瞬間もう彼女の視野には三宅の姿はなかったろうし、広島の選手がどこにいるかもわからなくなっていたのであろう。気の弱い本当の自分が表に出てきてしまったのである。
思い返せば昨年度の2021-22WEリーグ第11節でもやはり谷口のプレスに対して山下がミスをするシーンがあった。その時は失点にはつながらなかったもののリーグ戦で初めての負け試合となってしまっている。いうまでもなくサッカーはメンタルスポーツ。日本一の守護神が動揺すればチーム全体が浮足立つ。
INAC神戸レオネッサの最大のウィークポイントはGK山下杏也加である。
0 件のコメント:
コメントを投稿