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2022-09-23

2022-23 WEリーグカップ 第5節 S広島R 1ー1 千葉L

 前半は完全に千葉のペース。レジーナは絶望感を覚えるほどに攻撃が機能しない。ビルドアップはさせてもらえず、中盤にボールが渡っても前線までは届かずすぐに最終ラインにボールが戻ってくる。当然ながらそこも安心できる場所ではなく、ひやひやはらはらの連続で結局はロングボールを蹴り出す以外にできることがほとんどなかった。
 選手たちはどう思っただろう。千葉の選手たちは、今日は楽勝だ、きっとそう思ったに違いない。45分で1点しか入らなかったが、なにせまったくピンチにならないわけだからその1点だけで十分だとさえ思えたかもしれない。
 対するレジーナの選手たちは昨年シーズンの勝てなかった頃の気分が胸をよぎったりしていたのではないだろうか。

 しかし不思議なものである。後半に入ると少しずつ広島が前がかりになり始める。60分を過ぎた頃からは川島のスルーパスから決定機が生まれ中嶋の突破から木崎が走り込んで合わせるチャンスが生まれたりした。千葉のディフェンスはそれでも相変わらず堅かった。とはいえ前半のロングボールは影をひそめ、セカンドボールも広島が拾うことが多くなったのだ。
この変化はどう捉えたらよいのだろう。千葉の選手たちの足が止まったのだろうか。
 確かに前半、千葉の選手たちはよく走った。それがなければあれだけのプレスを効かせることはできない。しかしその分レジーナの選手たちだって追いまくられるように苦しい走りをしなければならなかったのだ。つまり運動量に大差はない。


 今期、男子チームのほうは後半の得点力の高さが際立っているが、これにはひとつ明白な理由を挙げることができる。それはハイプレスを徹底することで相手の守備的選手に強いストレスを与え続け、それが時間経過とともに集中力の持続を難しくするのである。それはおそらく肉体的疲労とは別のものなのだ。だから両チームの運動量に大差はなくても後半の攻防にその精神的疲労が如実に反映しているのである。
 だがそれが今回発生した、というわけではない。谷口木乃実はここ数試合では最も強く守備に行っていたし右の川島はるなもトップ下の上野真実もプレスに行く姿勢を見せてはいた。が、まだまだ強度も連動も足りておらず相手に恐怖の硬直を起こさせるにはほど遠かった。さらには最も強度の高いプレスができる松原志歩がいないのだから千葉のCBはさぞかし楽だったはずなのだ。

 そういうわけで、前半と後半の落差がどうにも納得できないのであるが、これがサッカーというスポーツの不思議なところなのかもしれない。

 今回は印象深かった選手にのみコメントしたい。

■谷口木乃実
 同点ゴールは見事だった。久々によくがんばったご褒美に神様があのゴールをくれたのかもしれない。得点できるかどうかはともかくとして毎試合今回のようなパフォーマンスが見られると嬉しい。

■中嶋淑乃
 彼女の美質のひとつが安定性にあるのだと痛感した。個々の選手もチーム全体もとにかく波が大きい中にあってその安定性はひときわ輝く。コンディションの維持にはくれぐれも注意してほしい。

■川島はるな
 また真っ先に交代になったが、何か理由があるのだろうか。彼女はスロースターターの典型だと思うのだ。今回もいつものように試合の入りが悪く、今日はダメかと思って見ていると少しずつ良くなってくる。20分くらいからミスが減り始め60分くらいからキレが格段に良くなり破壊力が増してきて尻上がりに調子が良くなる。前の試合も最後に逆転弾を叩き込んだわけだし、よしこれからだ、とおもっていると交代を出されてしまった。本当にもったいない。スロースターターなのは緊張癖なのかアップが足りないのかわからないが、この点、本人にも監督にもなんとか善処をお願いしたい。

  61:38 塩田から出たパスが強めなのをみてトラップをフェイクにし未来の自分のために敢えてボールに触らずに相手を抜いてゆくプレーをぜひご覧いただきたい。こういうプレーを連発する選手をあっさりと下げてしまう意図はどこにあるのか、目下レジーナ最大の謎となっている。

■塩田満彩
 中村楓になにがあったのかわからないが、無事代役が務まることを証明できた。たまに謎のプレーがあるが、それが致命的にならないなら、それも愛嬌があって魅力のひとつという気がしないでもない。  なんとなく彼女にCFをやらせてみたい気がする。破壊力抜群だったりしないだろうか。

■佐山桃子
 何度も書いているが成長著しいので続けて欲しい。ただたまになぜかパスが弱過ぎて大ピンチになるのでそこだけは改善してもらいたい。

■藤田七海
 アップの時の登場の仕方とか初々しくて嬉しくなった。ようやくベンチ入りまで漕ぎつけてきた感じだがこの勢いで福元美穂を乗り越えてほしい。

2022-05-08

山口千尋のかげがえのなさ

  サッカーはメンタルスポーツだと云われる。プレーヤの微妙な心理が試合の運びにそして結果に重大な影響を及ぼす。
 4/29と5/4に行われた対神戸の2連戦はそれを如実にものがった。
 4/29はキックオフから25分で広島は3点を失った。広島は相手が強いと意識して試合に入り、神戸は弱い相手を叩こうという意識があった。この心理の差が試合の流れを一方的にした。このままワンサイドゲームになり今シーズン最悪の試合になるのかと思われたが、33分小川の高い位置でのプレスに連動して谷口と柳瀬がボールを奪ったあたりから、雰囲気が変わり始める。広島側は、やれる、と思っただろうし、神戸は、意外としぶとい、と思ったろう。以降試合が終わるまで広島が攻めに攻めた。その後どうなったかはすでに書いたとおりである。5/4の同じ組み合わせの試合では神戸にはいいところが殆どなく、広島の勝利となった。もちろん神戸に戦力ダウンがあったわけでも広島が補強をしたわけでもない。両チームともほとんど同じメンバーの試合であったわけだが、心理や意識がいかに重大な影響をもたらすかをこの2試合は示してくれた。

 話は半年前に遡る。開幕第2節、広島はホームで初のリーグ戦となった仙台戦である。
この試合、前節の試合中に前十字靭帯を痛めてしまって増矢理花が欠場している。増矢がいない広島は堅い守備の仙台に対してなかなか有効な攻撃ができない。対する仙台の攻撃も単調な感じで必ずしも調子が良いようには見えなかったが、43分隅田凜が左から上げたクロスがするっとゴールの隅に吸い込まれてしまう。ここから仙台は少しずつエンジンがかかり53分に追加点が入る。ホーム初戦でなんとか勝ちたい広島は果敢に攻撃を仕掛けるがなかなか決定機が作れない。
 63分、柳瀬に代えて谷口を、川島に代えて島袋奈美恵を、中嶋に代えて山口千尋を広島は投入する。この3枚替えの用兵が見事に効を奏した。3人が連動して動き回ることでペースは一気に広島に傾き、怒涛の攻撃が始まるのだ。

 63分島袋からのボールを谷口がポストプレーで落としそれを小川が左の山口に展開、山口がツータッチでシュートしたボールはゴールの右隅を掠める。

 そのゴールキックを拾った山口のボールを上野が上げて谷口がヘディングでオンターゲット。

 65分山口がクロスを上げ谷口がヘディングでこれも枠内。

 67分ハーフライン付近で上野からもらったボールを山口がスルーパス。反応した谷口のシュートがまた枠内。さらにそのゴールキックを山口が奪って上野につけるとシュートはクロスバーを叩くすさまじい勢い。

 給水タイムで高平美憂を入れたこともあり仙台はプレスを強めることに成功する。が、それでも広島は強引に攻撃を続行。

 81分山口がドリブル突破に成功してクロス、82分今度は島袋が右翼でドリブル突破。

 87分山口と木崎で左をえぐってコーナー獲得。

 仙台にはA代表の巧者たちがたくさんいるが広島の気迫が彼女たちのミスを誘っているように見える。だがしかし広島はどうしても仙台のゴールを割れない。そして無常のロングホイッスル。

 試合が終わってロッカールームへ引き揚げる選手たちの最後尾で、 山口千尋が泣きじゃくっていた。悔し涙であることは判る。最初のホームで勝てなかったことで泣いているのか、これだけの攻撃をしても得点できなかったことが悔しいのか、はたまた同じような位置から打った相手のクロスはゴールになって自分のシュートはゴールにならないという皮肉な対比が悔しいのか、それは本人に訊かないとわからない。いや、きっと本人に訊いても整理のついた答えなどは得られないだろう。ただ、この試合で最も力を発揮して最も強い輝きを放ったのは他のだれでもない山口千尋だ。その山口千尋がひとり泣いている。

 レジーナのドリブラーはと問えば、いまや多くの人が中嶋淑乃の名を挙げるだろう。確かに中嶋のドリブルは成功率も高く観るものを魅了する。だが中嶋とは異なるタイプのドリブラーの名前も忘れないで欲しい。それは感情というガソリンを燃焼させて突破をしてゆく炎のドリブラーだ。

 普段の取材に応える彼女の印象はおしとやかな感じのかわいい女性である。それを思うと、2021年の春、プレシーズンマッチでゴールを決めたときウサギのように飛び跳ねて喜んだ姿を思い出す。あのかわいい姿とこの仙台戦で見せた気迫のドリブルとその後の泣き顔と、それぞれはどんな心で繋がっているのだろうか。

 たぶんその心は、真っ直ぐで素直な心、なのではないだろうか。ゴールが決まって喜ぶ天真爛漫な心。それがかわいらしい仕草を生み、自分たちを観に来てくれた大勢のお客さんたちの前で勝ちたい素直な気持ちが30分間の猛攻を生み出し、そしてそれが成就しなかった悔しさが真っ直ぐに溢れ出して涙になった。きっとそういうことなのだ。この動画を見ていただければ筆者のこの推測が当たらずとも遠からぬものであることがおわかり頂けると思う。


 人間にはいろいろな感情や心があるけれど、素直であること真っ直ぐであること純粋であることが最も大きなパワーを持つのは疑いないところだろう。

 類まれな心、強くて真っ直ぐな心を持った炎のドリブラー、その存在は目には見えない力でチームを強く牽引する。レジーナにとってかけがえのない存在だ。

2022-05-07

なぜサンフレッチェ広島レジーナを好きになったか

 元々カープファンであった。たぶんそこからスポーツはともかく広島推しになった。高校野球もラグビーもゲートボールも。
 そして紫色が好きであった。それも少し薄い色の藤紫。
 1993年Jリーグが始まった時、当然広島に注目した。おお、なんて美しい色のユニフォームだろう。ひと目でファンになった。運命の導き以外の何物でもない。
 そして2020年、.WEリーグができると聞いた。しかも広島がチームを新規に立ち上げると云う。前々からなぜサンフレッチェ広島は女子チームを作らないのか不思議に思っていたのだ。レッズもベルディもアルビレックスもあるのにサンフレッチェにはなかった。それが少し寂しかった。だからようやくかと思ってちょっと調べてみたらアンジュビオレ広島との絡みがありそうなのが少しだけ判った。仙田社長の話も動画で観た。ほかのクラブの社長さんたちよりも自分の言葉が多かったような気がして嬉しかった。
そうこうしているうちに2021年になり、やがて春が来た。プレシーズンマッチをYOUTUBEで観た。ジェフ戦である。
 右サイドから出たクロスがCFの脇腹をかすめて飛んでいく。ミスキックか思いきや逆サイドの選手の足元にピタッと収まった。フリーで打たれたシュートはゴールになった。ビックリした。度肝を抜かれた。そしてシビレた。そのアイディア。その技術。まさにファンタジスタのなせる技。
 選手の名前は?! 川島はるな。



 あとでこのゴールのシュートを決めた#14の選手の喜びかたがかわいいと話題になっていた。そこでもう一度シーンを観なおしてみると、おおっなるほど、これはかわいい。でもこの時はまだ山口千尋を知らない。彼女のことが好きになるのはもう少しあとのことになる。

内田好美の才能

  チームは第17節の相模原戦をきっかけに好調に転じた。4/29にはINAC神戸と激闘を演じた末破れはしたものの、5/4にはその神戸にリベンジを果たす結果を得た。リーグ戦終盤になってようやく安定感が出てきたと言っていい。もちろんこれは喜ばしいことであるのだが、良いことずくめかというとそうでもない。先発メンバが固定化してしまうという負の側面があるのだ。実際、ホーム初勝利のあとメインスタンドへ挨拶した時のベンチ外メンバーの表情は複雑だった。彼女たちの表情はマスクでよくわからないものの、試合に出たメンバと同じ晴れやかな顔つきをしている者は少なかったように見えた。

 ここでひとりの選手をピックアップしたい。#24DF内田好美である。
 後半戦が始まってチームは4連敗を喫してしまったが、この暗黒の連敗街道の中で鮮やか光彩を放ったのが右SBで先発出場した内田好美であった。
 鋭く精度の高いフィードを盛んに繰り出し、精力的に上がっていってチャンスメークする姿は独特のリズムを持っており、攻撃面で破壊力の高さを感じさせた。プレシーズンマッチにも前半戦にも出場機会がなかった彼女を後半戦に入って初めて見ることができた私は、中村監督はいよいよ秘密兵器を出してきた、と本気で思ったのだ。それくらい彼女のインパクトは強かった。
 初めて小野伸二を観たときの衝撃、初めて森崎和幸を観たときの衝撃、それに近いものを感じたのだ。巨大な才能を持つものだけが与える衝撃。それを内田好美は持っている。
 ただ、如何せん、チーム全体のパフォーマンスが良くなかった。サイドバックとしてはできることが少なかったかも知れない。その意味でチーム全体が停滞している時に出ることになった巡り合わせは不運というほかない。
 監督は当然彼女の能力を高く評価しているはずだ。だからこそ満を持して彼女を後半戦最初の仙台戦に起用したわけだ。だから彼女が先発で出た三試合のうち一つでも勝っていればほんとうに良かったのだが、運命の悪戯か、残念ながらそうはならなかった。チームとして結果が出ないとすれば、まだフィットしきれていないという判断が成立してしまうものなのかも知れない。
 しかし内田好美よ、あるいは出場機会が十分でない者たちよ、どうか腐らないで欲しい。サンフレッチェのスカウトは超の字を付けても足りないほど優秀だ。君たちはその優秀なスカウト陣に嘱望された結果いま現在広島にいる、そのことを忘れないで、チャンスをしっかりと手繰り寄せて欲しいのだ。