2022-11-28

2022-23 WEリーグ第4節 S広島R 1 − 1 I神戸

 終了直前に勝点3が掌中からこぼれ落ちてしまった。立花葉のドリブルによるペナルティエリアへの侵入から得たPKによる先制点をレジーナは守り切ることができなかった。

 89分のこのシーン、レジーナの守備に大きなミスがあったようには思えない。強いて言えば水野に対する警戒が薄くなっており、完全なフリーでボールを持たせてしまったというくらいか。しかしそれもすぐに立花が抑える態勢に入ったので水野の縦への仕掛けには十分対応できていた。ゴールまでは遠いので水野は縦にボールを運んでくるというのが立花の予測だったと思うが、水野は時間がないことを意識してボールを運ばずそのままクロスを入れてきた。立花としては裏を掻かれた形ではある。しかし普通ならこのクロスは成功しない。普通ならというのは、非凡なストライカーがいないならという意味だ。しかしあいにくINAC神戸には田中美南がいるのである。

 レジーナのGK木稲瑠那は田中が落ちてくるボールに間に合うと見てニアを警戒した。ここまで田中にニアへ何本も打たれているからだろう。実際タイミング的には間に合ったが田中の足はボールの軌道を変えることなくファー側へボールは流れゴールとなった。田中がGKの動きを見てボールに触れない選択をしたのかどうかはわからない。それは本人もよくわからないかもしれないようなそういう微妙なシーンだった。
 もちろんゴールを割られた木稲に責められるべきミスがあったわけではない。だがそこに田中美南が走り込んできていなかったら水野が入れたボールは木稲の手で無難に弾かれたことだろう。ストライカーの気合、実績、自信その他諸々の要素が総合した結果、攻守にわずかな差が生じた。


 ここまでなら前節対浦和戦の結論と大差はない。相手がやはり少しだけ強いのだということである。もちろんそれは誰に訊いてもそうなのだが、しかし前節と違って今回は引き分けである。
 勝ちを逃した選手たちは悔しそうで、ちょっぴり俯きがちに見えたが、強い強いINAC神戸、去年のチャンピオン神戸から勝点1を奪い取ったのだ。そこに注目したい。

 順序が逆になるが前述のとおり先制点は広島だった。62分、ボールを奪取したあとさらにドリブルで突破した上野真実からボールを預かりPEに入っていった立花を神戸のCB竹重杏歌理が倒してしまう。このPKを上野が決めてレジーナは先制に成功する。竹重は去年、リーグ戦の中でレギュラーを獲得してINACの鉄壁守備を実現した立役者だ。歳は19とまだ若いが実力はリーグ屈指と言って過言ではない。その竹重の守備を立花はわずかに上回った。

 実はこの結果にはそれに先立つ伏線があった。このシーンの少し前の56分、神戸の髙瀬愛美にイエローが出たあとのFKを小川愛が出し塩田満彩から縦に入ったボールを受けた立花がゴールライン際から突破を敢行。まずSB水野をかわした立花は止めに来たCB竹重をも抜き去り、さらに出てきたCB三宅史織まで抜いて中央にマイナスのクロスを出したのである。このプレーが神戸守備陣の度肝を抜きその心胆を寒からしめたことは疑いない。そして次の映像の'9:00からを見ていただきたい。ハームタイムで中村伸監督が立花葉その人に「勝負していい」「もうひとチャレンジできる」と指示を出しているのである。

 WEリーグが開幕して以来初めてスターティングメンバーに選ばれた立花はこの言葉でさらに自信を持っただろう。そしてチェレンジしたのである。この立花の潑剌としたチャレンジに一度やられてしまった竹重は二度目は絶対に負けまいとしてつい冷静さを欠いてしまった。勝負はほんとうに微妙なところで決着するものである。

 こうしてサンフレッチェ広島レジーナはINAC神戸と引き分けたのだ。まさに1対1なのだ。

 そして次節は苦手のベレーザである。ここでどういう試合ができるか、刮目してみようではないか。

■立花葉
 文句なく、この試合のヒロインだった。できれば永遠にこのままでいて欲しい。

■上野真実
 PKはミスキックだったが名手山下杏也加をして逆に飛ばせたあたりは再び爆発する予兆とみると頼もしい気がする。素晴らしいプレーがたくさん見られた。

■塩田満彩
 攻守に渡って安定感がある。謎なプレーは少なくなってきた。ただハンドを取られないように手の使い方は気をつけてほしい。

■近賀ゆかり
 先発なので少し不安を覚えたが始まってみるとその訳もわかった。さすがというほかない。が、他の選手には彼女を出させないようにがんばってほしいのだ。

2022-11-12

2022-23 WEリーグ第3節 浦和 2 − 1 S広島R

 試合を観終わったらすぐにこのブログを書こうと思っていたのだが、それができなかった。それだけこの試合は多くのことを物語っていた試合だった。想いは複雑である。

 浦和と広島、この両チームには残念ながらチーム力に差がある。ほとんどすべての選手が代表格、現役代表もしくは代表経験者である浦和に対して、広島ではそう言える選手が何人いるか。そうした戦力差では明らかに浦和のほうが強い。そしてその差の通りの試合結果となった。

 ではレジーナには勝ち目がなかったのか、といえばそうではない。少なくともレジーナの選手たちは気持ちの上で負けてはいなかった。だから終始苦しい展開ながらも一方的なスコアにはならなかった。実際、佐山桃子がファウルを取られたあのプレーさえなければ引き分けに終わり、勝点を分け合ったかもしれないのだ。


 では、この敗戦の原因は佐山にあるのかというと、そうではない。佐山のスライディングタックルは確かにボールに行っていた。ただ運の悪いことにボールは清家貴子の右足に当たり足元に残った状態になって清家が倒れる形になった。スライディングと同時にボールが外側に飛び出していればおそらくファウルにはならずPKを与えることもなかっただろう。しかし問題なのは、スライディングタックルに行った判断だ。清家がボールを受けペナルティエリアに侵入してきたときから佐山は清家にピッタリとついて並走しており、あの地点ではもはや角度がなくなっていたので、清家にシュートチャンスはほとんどなくなっていた。だからリスクの高いスライディングタックルでボールを弾く必要はなかったのだ。

 そうなるとますます佐山のミスだということになりそうだが、まさにこここそが彼我の力の差にほかならない。ゴールラインが近づいてしまって清家はおそらく迷っただろう。切り返してシュートを狙うか、それともシュートは諦めてコーナーキックを取りに行くか、あるいは後の味方にパスを出すか、どうしようか、と。そしてその迷いの瞬間を佐山は見逃さなかった。すかさずスライディングを敢行した。その瞬時の判断は見事なものだった。そしてチャンスと見たらチャレンジする意欲も素晴らしい。
 ただ、もし攻守が逆だったとしたら浦和のCBは同じようにスライディングをしただろうか。おそらくしていないのではないか。なぜならPKを与える危険性が高いからである。この差が浦和と広島の厳然たる力量差にほかならない。技術的な問題はほとんどない。気持ちの上でも負けてはいない。しかし最後のところで冷静な判断ができるかどうか、そういうわずかな差。ほんとうにそれは紙一重の差かもしれない。

 しかしこの差を埋めるのは一朝一夕ではできない。おそらく何年も彼女たちの背中を追い続け、努力を重ねなければならない。強化をし続けなければならない。そして5年後10年後に彼女たちと肩を並べるところまで到達できるかどうかだ。その長い旅路がいま始まった、あらためてそんな気がしたのである。