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2022-09-09

ハイプレスでWEリーグを席巻せよ

 9月4日の試合のレポートで紫熊倶楽部の中野さんが書いていた。レジーナもボールへの守備をやる方針だとのことである。今までそこがいまひとつハッキリしていなかった。監督も「前からのプレスは意識してやってきてはいる」と語っていたし、試合内容からみてもそれは十分に感じられてはいた。ただどこまでやるのか、どの程度徹底するのかがわからなかった。それが今回は明確になった。やる、のである。そしてその方針に応える決意を表明したのが松原志歩だったというわけだ。
 ハイプレスの徹底は高い効果を生むことは誰もが知っている。どのチームの監督もやりたくてやりたくてうずうずしているに違いない。ただ現在のところWEリーグでハイプレスの徹底を実現しているチームは未だ存在しない。昨年ではINAC神戸が最もそれに近かったが、それでもまだ部分的であり散発的なレベルであった。なので、カップ戦の第一節で愛川陽菜の守備から3点を奪ったのには度肝を抜かれたのである。この動きを見ると今年の神戸は密かにハイプレスを徹底する準備をしているのかもしれない。中島依美を出して脇阪麗奈を獲得したのもそう考えると腑に落ちるものがある。

 もちろん浦和にしてもベレーザにしても中盤の圧は極めて強い。彼女たちは長い長い年月をかけてその連係を練り上げてきて今の地位を築いている。ところがハイプレスの場合、それを裏返されるとその中盤の圧が抜けてしまうリスクがあるので浦和もベレーザも容易には転換できないだろう。その点ではわがレジーナは守るべきものもなければ失うものも少ない。

 ただしハイプレス戦術は選手たちに厳しい負荷をかける。レジーナにそれができるのだろうか。中村監督が1年以上を費やしてまだ本格導入に至っていないということはやはり相当の困難があるのであろう。

 なんと言っても最大の壁は契約の問題なのではないかと想像する。WEリーグはプロリーグだとはいえ、まだすべての選手とA契約を結べる状態にはなっておらず、各クラブともアマチュア契約の選手が少なからぬ数いるということなのだ。それはクラブ側の予算規模の問題もあるだろうが、それだけではなく選手の側もプロ契約を選択できない事情がある場合も少なくないようなので複雑だ。なにせなでしこジャパンのエース菅澤優衣香ですらクラブとはプロ契約を結んでいないのである。とうぜんのことながらサンフレッチェ広島でもこの問題は同じように存在するはずだ。

 プロ契約のない選手は生業を他に持っているのでサッカーのほうの負荷が高過ぎるとそちらに悪影響が出てしまうことが考えられる。したがってクラブ側は選手ひとりひとりの事情や状態をキメ細かに勘案しつつ全体のプランを立案し、そのうえでそのプランを日々のトレーニングに落とし込んでいく必要がある。号令一下、右向け右で、ついてこれない者は戦力外、という単純な図式は成立しない。前回の記事では落胆のあまり谷口木乃実に強い批判をしてしまったがもし彼女がA契約選手でないならこの点で筆者にも配慮が足りず陳謝しなければならないかもしれない。

 こうした事情がいろいろとあるにせよ、チームとしてはともかくもハイプレス戦術に舵を切ったのであるから今回はその実現可能性を見てゆこうと思う。

 

 
 まず最もハイプレス戦術に親和性の高い選手としては柳瀬楓菜が挙げられる。彼女のプレースタイルは高校の時からのものである。おそらく広島の強化部長は彼女の突出した運動量と球際の強さを見て我が意を得たりと手を叩いたに違いない。これこそ近未来の広島が必要とするスキルを持った選手であると。そして本人が広島を選んだのはそこが明確なオファーだったからではないかと思われるのである。ハイプレス戦術では前線の攻撃的な選手による強い守備が求められるわけだが、それだけでは失敗時の大きなリスクを担保することができない。現在の男子チームの好調の源泉はボランチの野津田岳人の運動量とボール奪取がきわめて高いレベルにあるからに他ならない。この存在がないと前線の選手は裏返されることが怖くて強度の高いプレスを敢行できないのである。ボランチでは小川愛も柳瀬のパートナーとしてうまく噛み合っており、この二人の存在で戦術遂行の基盤は十分にあると言えよう。さらに前節では松原志歩がこの二人に加わった。これで層としても厚くなりつつある。島袋奈美恵に関しては今までのところもっぱら左右のウイングで使われているが、このグループに入れてみたい気がする。また内田好美にも適性があるように感じられる。

 次に攻撃陣に関してだが、4月からのレジーナの快進撃の突破口となった選手こそ他ならぬ谷口木乃実であった。その意味で当然彼女には期待がかかる。戦術理解という意味でも彼女が牽引役になれるはずだと思うので、安定したパフォーマンスを発揮できればチーム力は格段に向上する。
 ポテンシャルの高さで言えば川島はるなの右に出る者はなかなかいないだろう。彼女がノジマステラ相模原にいた時代は菅野監督だった。菅野監督と言えば厳しい走り込みをさせることで有名だが、その走り込みで選手全員が青息吐息になっていても川島はるなだけはただひとり平然としていたというエピソードがある。彼女の足元の巧みさと相まってレジーナのスカウトの目にとまったのがその並外れた走力だっただろうことは想像に難くない。彼女がブレークスルーすると大きな戦力になるのは7月2日の記事でも書いたとおりだ。
 その記事の中には瀧澤千聖のことも書いているが、彼女についてはなんの心配もない。まさにハイプレス戦術にはうってつけの選手である。強化部が最初から獲得リストに挙げていたというのも大いにうなずける。中嶋淑乃についても基本的に現状のままで対応できそうである。微妙なのは大内梨央だが、キャラクターとしてはもともと元気印なのでひとたびはまると相当面白いことになりそうだ。その点では炎のドリブラー山口千尋も同様で大いに期待できる。立花葉は予測ベースで少し遠目から行く現状の守備スタイルもなかなか魅力的ではあるが、ボールに対しての守備となると少し転換が必要かもしれない。ただ使い分けができるようになるとプレースタイルの幅が格段に広がるのでトライしてみてほしい。現役の日本代表ならびに代表格である上野真実、増矢理花の両名はそんなことできないなどとは口が裂けても言わないだろう。ということでやれる選手は揃っているのである。あとは実行あるのみで、早く連係の熟度が問題になるところまで行ってほしいものである。

 ディフェンダーについては実はすでに対応が相当進んでいると筆者は見ているのだがいかがだろうか。松原優菜、塩田満彩はフィード力があり、佐山桃子については攻守両面で伸長が著しい。ただ昨年は相手チームのハイプレスによってかなり失点してしまっているので、その対処能力を高めるためにも攻撃陣の対応が急がれる状況だと考える。

2022-05-07

2021-22 Yogibo WEリーグ 第19節

 「『もうやりたくない』そう思うくらいに叩いておきたい」4月29日の第19節を前にしてINAC神戸のある選手はそう語ったと伝えられている。
それは5日後の5月4日に予定されている第11節の繰延べ試合を念頭に置いた発言である。この言葉が出てきた背景には、直近の2試合、第17・18節の広島が予想外の良い勝ち方をしているということがあっただろう。さらには、前半戦の第5節で広島は王者浦和に劇的な逆転勝ちをしたこと、さらにはそれを皮切りに浦和が3連敗のドロ沼にはまったことがあったかもしれない。
 広島は強いチームではない。15試合が終わってまだ4勝しかしていないのである。そういう弱小チームを相手にしてのこの言葉は少し調子が強すぎる。『もうやりたくない』と思うほど叩く必要がある、のは、そうしないと危険だから、なのであうか。つまりここまで無敗を誇りWEリーグ初代女王の栄冠をほぼ手中にしているチームをして胸に一抹の不安感を起こさせる、そんな存在がサンフレッチェ広島レジーナだということなのだろうか。
 
 そして4月29日第19節の結果はどうだったか。3−2でINAC神戸レオネッサは勝利した。だが果たしてレオネッサは広島を『もうやりたくない』という気にさせるほど叩くことができただろうか。結果は逆だった。『もうやりたくない』と思ったのは神戸の方だったのだ。


2021-22 Yogibo WEリーグ 第11節

■ S広島レジーナ 1−0 INAC神戸レオネッサ

結果が出る、とはこういうことなのだろう。おめでとうレジーナ。
感動的で歴史的な勝利。

                                                                          
GK福元美穂6.0素晴らしい安定感。木稲瑠那はこの壁を超えて行け。
DF佐山桃子5.5シンプルにプレーして危なげなかった。クレバーな判断も光っていた。
DF中村楓6.0この試合でも貢献度は非常に高い。MVPに推す声もあった。
RSB松原優菜5.5プレーが安定してきている。球際も強いところを見せていた。
LSB木崎あおい6.0久々にキレのいいプレーぶりが戻ってきた。残り試合暴れまくってほしい。
MF小川愛6.5配給、ボール奪取、ポジション取りでINACの中盤を上回った。見事。
MF柳瀬楓菜6.5好調持続。近賀ゆかりが持つ10番はいずれ彼女に受け継がれるのかもしれない。
RWG川島はるな5.5あのシュートが枠に行けば6.0だった。試合の入りは緊張で硬かった。
LWG中嶋淑乃7.0得点も良かったが守備での貢献が素晴らしい。広島の宝。移籍しないで欲しい。
OMF上野真実6.5得点こそなかったもののINACの中盤を最後まで機能させなかった。
CFW谷口木乃実6.5あの山下にフィードミスをさせるあのプレーぶりがチームを勝利に導いた。
RWG立花葉6.0縦への突破は相手に予測されていたが、でもその上をいっていた。
LWG山口千尋5.5彼女のメンタルの強さがチームを引っ張っているのは間違いない。
OMF大内梨央5.5彼女が入ってくるだけでチーム全体が元気になるような気がする。