9月4日の試合のレポートで紫熊倶楽部の中野さんが書いていた。レジーナもボールへの守備をやる方針だとのことである。今までそこがいまひとつハッキリしていなかった。監督も「前からのプレスは意識してやってきてはいる」と語っていたし、試合内容からみてもそれは十分に感じられてはいた。ただどこまでやるのか、どの程度徹底するのかがわからなかった。それが今回は明確になった。やる、のである。そしてその方針に応える決意を表明したのが松原志歩だったというわけだ。
ハイプレスの徹底は高い効果を生むことは誰もが知っている。どのチームの監督もやりたくてやりたくてうずうずしているに違いない。ただ現在のところWEリーグでハイプレスの徹底を実現しているチームは未だ存在しない。昨年ではINAC神戸が最もそれに近かったが、それでもまだ部分的であり散発的なレベルであった。なので、カップ戦の第一節で愛川陽菜の守備から3点を奪ったのには度肝を抜かれたのである。この動きを見ると今年の神戸は密かにハイプレスを徹底する準備をしているのかもしれない。中島依美を出して脇阪麗奈を獲得したのもそう考えると腑に落ちるものがある。
もちろん浦和にしてもベレーザにしても中盤の圧は極めて強い。彼女たちは長い長い年月をかけてその連係を練り上げてきて今の地位を築いている。ところがハイプレスの場合、それを裏返されるとその中盤の圧が抜けてしまうリスクがあるので浦和もベレーザも容易には転換できないだろう。その点ではわがレジーナは守るべきものもなければ失うものも少ない。
ただしハイプレス戦術は選手たちに厳しい負荷をかける。レジーナにそれができるのだろうか。中村監督が1年以上を費やしてまだ本格導入に至っていないということはやはり相当の困難があるのであろう。
なんと言っても最大の壁は契約の問題なのではないかと想像する。WEリーグはプロリーグだとはいえ、まだすべての選手とA契約を結べる状態にはなっておらず、各クラブともアマチュア契約の選手が少なからぬ数いるということなのだ。それはクラブ側の予算規模の問題もあるだろうが、それだけではなく選手の側もプロ契約を選択できない事情がある場合も少なくないようなので複雑だ。なにせなでしこジャパンのエース菅澤優衣香ですらクラブとはプロ契約を結んでいないのである。とうぜんのことながらサンフレッチェ広島でもこの問題は同じように存在するはずだ。
プロ契約のない選手は生業を他に持っているのでサッカーのほうの負荷が高過ぎるとそちらに悪影響が出てしまうことが考えられる。したがってクラブ側は選手ひとりひとりの事情や状態をキメ細かに勘案しつつ全体のプランを立案し、そのうえでそのプランを日々のトレーニングに落とし込んでいく必要がある。号令一下、右向け右で、ついてこれない者は戦力外、という単純な図式は成立しない。前回の記事では落胆のあまり谷口木乃実に強い批判をしてしまったがもし彼女がA契約選手でないならこの点で筆者にも配慮が足りず陳謝しなければならないかもしれない。
こうした事情がいろいろとあるにせよ、チームとしてはともかくもハイプレス戦術に舵を切ったのであるから今回はその実現可能性を見てゆこうと思う。
次に攻撃陣に関してだが、4月からのレジーナの快進撃の突破口となった選手こそ他ならぬ谷口木乃実であった。その意味で当然彼女には期待がかかる。戦術理解という意味でも彼女が牽引役になれるはずだと思うので、安定したパフォーマンスを発揮できればチーム力は格段に向上する。
ポテンシャルの高さで言えば川島はるなの右に出る者はなかなかいないだろう。彼女がノジマステラ相模原にいた時代は菅野監督だった。菅野監督と言えば厳しい走り込みをさせることで有名だが、その走り込みで選手全員が青息吐息になっていても川島はるなだけはただひとり平然としていたというエピソードがある。彼女の足元の巧みさと相まってレジーナのスカウトの目にとまったのがその並外れた走力だっただろうことは想像に難くない。彼女がブレークスルーすると大きな戦力になるのは7月2日の記事でも書いたとおりだ。
その記事の中には瀧澤千聖のことも書いているが、彼女についてはなんの心配もない。まさにハイプレス戦術にはうってつけの選手である。強化部が最初から獲得リストに挙げていたというのも大いにうなずける。中嶋淑乃についても基本的に現状のままで対応できそうである。微妙なのは大内梨央だが、キャラクターとしてはもともと元気印なのでひとたびはまると相当面白いことになりそうだ。その点では炎のドリブラー山口千尋も同様で大いに期待できる。立花葉は予測ベースで少し遠目から行く現状の守備スタイルもなかなか魅力的ではあるが、ボールに対しての守備となると少し転換が必要かもしれない。ただ使い分けができるようになるとプレースタイルの幅が格段に広がるのでトライしてみてほしい。現役の日本代表ならびに代表格である上野真実、増矢理花の両名はそんなことできないなどとは口が裂けても言わないだろう。ということでやれる選手は揃っているのである。あとは実行あるのみで、早く連係の熟度が問題になるところまで行ってほしいものである。
