2022-10-30

2022-23 WEリーグ第2節 S広島R 1− 2 N相模原

 WEリーグの2年目は混戦の兆しを見せている。
 ノジマステラ相模原の出来が素晴らしかった。昨シーズン10位に沈んだチームとはとても思えない。ボールに対する寄せが速くしかもパワフルで球際が強い。パスの精度が高く、ボールのスピードも速い。広島は開始から30分間ほとんど何もさせてもらえなかった。
 相模原がこの試合で見せたパフォーマンスを安定的に維持できるのなら、INAC、レッズ、ベレーザからもある程度勝点を奪えるに違いない。

 この相模原と似たような印象を与えるのがASエルフェン埼玉だ。今節ではホームに新潟を迎えたが、やはり前半は新潟にほとんど攻撃の時間を与えていなかった。
 そして注目するべきはAC長野パルセイロLである。こちらは完全なハイプレス戦術。数少ないチャンスをきっちり決めたマイナビ仙台に勝点3を持って帰られてしまったものの、試合内容は完全に長野のペースで終始していた。フィニッシュのところの精度と強さが改善されれば攻撃力、得点力は相当なものになるはずで、それこそトップ3の一角を崩すことになるかもしれない。本当はレジーナにこのサッカーを先に実現してほしかったが、就任初年度にして早くもここまで作り上げてきている田代監督の手腕を褒めるべきなのだろうか。

 さて、こうした状況の中、早くも黄色信号が灯ったかに思える、レジーナ、どうする。


■塩田満彩
 素晴らしかった。相手に二人がかりで寄せられても慌てることなく対応したどころか、足技を繰り出して何度もプレスを剥がしていた。このあとトップ3との戦いになるが、今日のように自信を持ってプレーしてほしい。彼女は右サイドではプレーできないだろうか。

2022-10-25

2022-23 WEリーグ第1節 S広島R 2−1 千葉L

 サッカーはメンタルがモノをいう。まさにそういう試合だった。
開始1分30秒、千葉のコーナーキックのこぼれを瀧澤千聖が拾い左サイドで運び上がった。そして前線中央に走り込んでいた中嶋淑乃を狙ってクロスをあげる。結果、中嶋には当たらなかったが、このプレーには勢いがあった。これを見て、今日は負けない、そう思った。
 試合の入りは良くない。開始早々にコーナキックを取られ、3分には鴨川実歩にバーを叩かれるシュートを浴びてしまった。押し込まれ、再三ピンチを招くそんな立ち上がりではあったが、負ける気がしない。なぜなんだろう。しばらく観ていて腑に落ちた。選手たちが皆チャレンジをしているのである。球際もスルーパスも積極的にチェレンジしている。ロングボールも蹴らされているのではなく狙って蹴っている。ただ、うまくいっている、とは言い難い。縦パスは通らず、ボール奪取は成功せず、ロングボールはターゲットに収まらない。去年はホームでなかなか勝てなかった。選手たちの胸にはその苦しい思いがある。開幕戦がホーム開催となれば緊張するのはやむを得ない。みんな大小いろいろなミスをしている。その点ではのびのびとプレーしている千葉のほうが遥かにプレーの精度が高い。しかしそれでも、選手たちは気後れせずに粘り強くやっていたのだ。この気持ちが観る者に希望を与えてくれたのだと思う。
 37分コーナーキックから失点してしまう。それでも、これで終わりではない、いやむしろ面白くなった、そんな気さえした。そして後半開始直後の中嶋の劇的な得点が生じる。前半、出来が悪いながらも諦めずにチャレンジし続けた前向きな気持ちが生んだ得点だったように思う。

 レジーナは不思議なチームである。これだけプレー精度が悪いと普通は勝てないはずだと思うのだが、終わってみれば逆転勝利である。もちろん際どい勝ち方で、辛うじて拾った勝利である。スタッツを見る限りではシュート数は千葉の9に対してレジーナは5。CKは千葉の5に対しわずかに1。終始押し込まれた展開だったのかという数字である。だが試合を見返してみると前半も後半もけっこうな時間攻めている。ワントップの谷口木乃実には少なくとも3回は決定機があったし、上野真実にもチャンスがあった。これらの決定機に決められなかったのは仕方がない。けれど少なくともシュートが打てていればスタッツの数字から受ける印象もだいぶ変わったものになったはずだ。

 千葉は昨年4位の強豪。この強い相手に対して少々出来が悪くても勝ちをもぎ取ることができる。このチームにはそういう不思議なポテンシャルがある。それを感じることでワクワクできるから、レジーナにはファンが多いのだろう。プレーの精度が上がり、さらにチームがまとまってきたとき、このチームはどこまで行けるのだろうか。

・瀧澤千聖
 さすがはAC長野の背番号10である。カップ戦のときの借りてきた猫のような感じはいったいなんだったのか。開幕戦でしっかりとスタメンを勝ち取ったばかりでなく、チームを引っ張るプレーぶりは見事というほかない。レジーナに来てくれて本当にありがとう。

・中嶋淑乃
 POMは瀧澤に譲ったもののあのゴールは値千金。瀧澤と二人で10点など目標が低すぎる。今年は思い切り爆発してほしい。またいつものとおり守備での貢献がやはり光っている。84分相手GKが素早いスローで速攻態勢に入った瞬間スプリントを始めてプレスに戻り右サイドまで追いかけて千葉のカウンタを潰した守備は感動的だった。

・齋原みず稀
 プレーも正確だったしアイディアもあり判断も速かった。持ち味は出せていた。しかし今求められているのはそのレベルではないことに留意してほしい。谷口をスタメンから引きずり降ろさなければならないのだ。より激しくハイプレスに挑み、ポストプレーを磨いて欲しい。じっくりやっている時間はない。

・佐山桃子、中村楓
 この二人がいなければ負けていた。特に佐山は攻撃面でも効いていた。呉屋絵理子や森宙舞はここをこじ開けてこそ、なので全力で頑張ってほしい。

・増矢理花
 まだ試合勘が戻っていないのか。テンポが周りと少し違うような気がする。もちろん実力はこんなものではないはず。次節に期待したい。

・塩田満彩
 前半はフィードがあまり成功していなかった印象がある。そこは修正してほしいが、気合いの入った守備は観ていて気持ちが良かった。なにはともあれ開幕スタメンでフル出場を果たした。おめでとう。

・福元美穂
 自分のミスから大ピンチになったが、そこで守り切ろうとする姿には鬼気迫るものがあった。この局面もメンタルで相手を上回った結果のセーブだったと思う。控えの3選手は早くこの名キーパーに引導を渡して自分の時代を引き寄せろ。

2022-09-25

2022-23 WEリーグカップ 第6節 I神戸 2−1 S広島R

  この試合、レジーナについては言えることが少ない。ただひとつはっきりとわかったことがあるのでそれを書いておこうと思う。
 神戸の重鎮選手は誰かと問えば多くのひとがGK山下杏也加の名を挙げるであろう。なんといっても彼女はWEリーグの初代MVPであり、A代表でも不動の守護神である。もちろんその実力に疑いを差し挟む余地はない。
 彼女は入場時に上着を肩に引っ掛ける一風変わったスタイルで出てくる。この武張ったアウトロースタイルは強い彼女の強さの現れであるように見える。しかし本当の彼女はとても気が小さい。ピンチになるとドギマギしてしまうような気の弱い女の子なのだ。だから彼女は本当の自分=弱い自分が絶対に表に出てこないように自分自身をなんとか鼓舞しようとしてアウトローの真似などしているのである。自分は強いのだと自己暗示をかけ、周囲にもそうアピールすることで自ら退路を断ち自分を追い詰める。ここまでのことができる者は少ないだろう。他人には決して言えないそういう不断の努力が実を結んで女子サッカー界NO.1GKの地位を得るまでになった。まことに見事というほかない。



 30分の上野真実のゴールシーンを観ていただきたい。広島側左サイドから木崎あおいがワントップの谷口木乃実をめがけた長いパスを出す。しかしボールは谷口をマークしていた三宅史織が拾いGK山下にバックパスする。このボールがが少しだけ緩くなったので走ってきた谷口はスピードを落とさずそのまま山下まで追ってゆく。ここで名手山下にミスが出る。クリアしたつもりのボールがあろうことかフリーでいた上野の足元へ行ってしまったのだ。
 谷口のプレスはさほど強烈なものではなかった。谷口はボールに間に合わないことがわかった時点でスピードを緩めており、体をぶつけてでもボールを奪ってやろうという気迫は感じられない。したがってタイミング的にもさほど際どいものではなく山下にはいろいろな選択肢があったはずだ。大きく蹴り出すのもよし、トラップして谷口から離れるのもよし、フリーになっている三宅に戻してもよかった。でも彼女は慌ててしまう。あの瞬間もう彼女の視野には三宅の姿はなかったろうし、広島の選手がどこにいるかもわからなくなっていたのであろう。気の弱い本当の自分が表に出てきてしまったのである。
 思い返せば昨年度の2021-22WEリーグ第11節でもやはり谷口のプレスに対して山下がミスをするシーンがあった。その時は失点にはつながらなかったもののリーグ戦で初めての負け試合となってしまっている。いうまでもなくサッカーはメンタルスポーツ。日本一の守護神が動揺すればチーム全体が浮足立つ。

 INAC神戸レオネッサの最大のウィークポイントはGK山下杏也加である。

2022-09-23

2022-23 WEリーグカップ 第5節 S広島R 1ー1 千葉L

 前半は完全に千葉のペース。レジーナは絶望感を覚えるほどに攻撃が機能しない。ビルドアップはさせてもらえず、中盤にボールが渡っても前線までは届かずすぐに最終ラインにボールが戻ってくる。当然ながらそこも安心できる場所ではなく、ひやひやはらはらの連続で結局はロングボールを蹴り出す以外にできることがほとんどなかった。
 選手たちはどう思っただろう。千葉の選手たちは、今日は楽勝だ、きっとそう思ったに違いない。45分で1点しか入らなかったが、なにせまったくピンチにならないわけだからその1点だけで十分だとさえ思えたかもしれない。
 対するレジーナの選手たちは昨年シーズンの勝てなかった頃の気分が胸をよぎったりしていたのではないだろうか。

 しかし不思議なものである。後半に入ると少しずつ広島が前がかりになり始める。60分を過ぎた頃からは川島のスルーパスから決定機が生まれ中嶋の突破から木崎が走り込んで合わせるチャンスが生まれたりした。千葉のディフェンスはそれでも相変わらず堅かった。とはいえ前半のロングボールは影をひそめ、セカンドボールも広島が拾うことが多くなったのだ。
この変化はどう捉えたらよいのだろう。千葉の選手たちの足が止まったのだろうか。
 確かに前半、千葉の選手たちはよく走った。それがなければあれだけのプレスを効かせることはできない。しかしその分レジーナの選手たちだって追いまくられるように苦しい走りをしなければならなかったのだ。つまり運動量に大差はない。


 今期、男子チームのほうは後半の得点力の高さが際立っているが、これにはひとつ明白な理由を挙げることができる。それはハイプレスを徹底することで相手の守備的選手に強いストレスを与え続け、それが時間経過とともに集中力の持続を難しくするのである。それはおそらく肉体的疲労とは別のものなのだ。だから両チームの運動量に大差はなくても後半の攻防にその精神的疲労が如実に反映しているのである。
 だがそれが今回発生した、というわけではない。谷口木乃実はここ数試合では最も強く守備に行っていたし右の川島はるなもトップ下の上野真実もプレスに行く姿勢を見せてはいた。が、まだまだ強度も連動も足りておらず相手に恐怖の硬直を起こさせるにはほど遠かった。さらには最も強度の高いプレスができる松原志歩がいないのだから千葉のCBはさぞかし楽だったはずなのだ。

 そういうわけで、前半と後半の落差がどうにも納得できないのであるが、これがサッカーというスポーツの不思議なところなのかもしれない。

 今回は印象深かった選手にのみコメントしたい。

■谷口木乃実
 同点ゴールは見事だった。久々によくがんばったご褒美に神様があのゴールをくれたのかもしれない。得点できるかどうかはともかくとして毎試合今回のようなパフォーマンスが見られると嬉しい。

■中嶋淑乃
 彼女の美質のひとつが安定性にあるのだと痛感した。個々の選手もチーム全体もとにかく波が大きい中にあってその安定性はひときわ輝く。コンディションの維持にはくれぐれも注意してほしい。

■川島はるな
 また真っ先に交代になったが、何か理由があるのだろうか。彼女はスロースターターの典型だと思うのだ。今回もいつものように試合の入りが悪く、今日はダメかと思って見ていると少しずつ良くなってくる。20分くらいからミスが減り始め60分くらいからキレが格段に良くなり破壊力が増してきて尻上がりに調子が良くなる。前の試合も最後に逆転弾を叩き込んだわけだし、よしこれからだ、とおもっていると交代を出されてしまった。本当にもったいない。スロースターターなのは緊張癖なのかアップが足りないのかわからないが、この点、本人にも監督にもなんとか善処をお願いしたい。

  61:38 塩田から出たパスが強めなのをみてトラップをフェイクにし未来の自分のために敢えてボールに触らずに相手を抜いてゆくプレーをぜひご覧いただきたい。こういうプレーを連発する選手をあっさりと下げてしまう意図はどこにあるのか、目下レジーナ最大の謎となっている。

■塩田満彩
 中村楓になにがあったのかわからないが、無事代役が務まることを証明できた。たまに謎のプレーがあるが、それが致命的にならないなら、それも愛嬌があって魅力のひとつという気がしないでもない。  なんとなく彼女にCFをやらせてみたい気がする。破壊力抜群だったりしないだろうか。

■佐山桃子
 何度も書いているが成長著しいので続けて欲しい。ただたまになぜかパスが弱過ぎて大ピンチになるのでそこだけは改善してもらいたい。

■藤田七海
 アップの時の登場の仕方とか初々しくて嬉しくなった。ようやくベンチ入りまで漕ぎつけてきた感じだがこの勢いで福元美穂を乗り越えてほしい。

2022-09-11

WEリーグカップ第4節 N相模原 2−2 S広島R

 サッカーには劇的な試合というものが珍しくない。この試合もまさに劇的。84分間お互いに攻め手を欠いたというべきかお互いに良く守ったというべきか、ともかくも得点が生まれない拮抗した内容だった。
 しかし84分にステラ藤原加奈の見事なミドルシュートが炸裂したのを皮切りに最後の10分間で双方のチームに2ゴールづつが入るというそれまでとは打って変わった驚きの展開となった。

 とりわけ最後のステラのコーナーキックからの得点は不思議というほかはなかった。両チームの選手たちがGK福元美穂の前に密集する中、杉田亜未が蹴ったボールは約30度の角度でそのどまんなかに落ちてくる。ステラの選手たちはそのボールを押し込もうと思ったしレジーナの選手たちは弾き出そうと思った。それは確かだろう。しかし結果的には誰もそのボールに触ることができなかったのだ。まるでなにかの意志を持った生命体であるかのようにボールは地面に落ち、弾んでゴールの中に入っていった。杉田亜未のキックが素晴らしかった。それは間違えないのだが、10数人が密集しているにも関わらず誰もボールに触れなかったのはまことに不思議である。 
 



 ただ、こういう不思議な失点があったから勝てなかった、と言えるかというとそうではない。決定的なシーンが2つあった。
 ひとつめは28分、平野優花に広島側右サイドを抜け出されたシーン。たまたま平野がトラップミスをしてくれたので松原優菜が対応に間に合い事なきを得たが、平野のミスがなければGKとの1対1になるところだった。
 ふたつめは、左サイドを松本茉奈加に抜け出され上げられたクロスを中央で杉田亜未に頭で合わせられたシーン。数的不利はなかったにもかかわらず杉田は完全なフリーで、十分に首を振ってヘディングしていた。少し距離があったし正面でもあったのでGK福元もキャッチできたが、もしグラウンダーのクロスだったら強烈なシュートをもろに食らっただろう。
 いずれもショートカウンタを発動された形であるが、こうした守備破綻をなんとかしないといくら点をとっても勝てないということになってしまう。
 最後のワンプレーで不思議なことが起こったのは偶然ではなくて、サッカーの神様が勝つべき内容ではなかったぞと勝点3を取り上げたのかもしれない、そんな気がした。


GK福元美穂5.0守備連係の不備を修正していくことができるか注目したい。
RCB佐山桃子5.559分のピンチは裏返されてからマークの受渡しに失敗してのこと。
LCB中村楓5.0佐山が上がった先を把握していれば杉田をフリーにはさせなかったはず。
RSB松原優菜5.5地味ながら攻守に良い貢献ができている。もっと自信を持ってほしい。
LSB木崎あおい5.0気の所為なら良いのだが、溌剌とした感じがないのでやはり心配だ。
DMF小川愛5.5彼女の展開力はもはや欠かせない。怪我だけは気をつけてほしい。
DMF柳瀬楓菜6.0なんかおしゃれになってきたのか。その余裕でいけばゴールも決まる。
RWG川島はるな6.5守備面での貢献が素晴らしかった。シュートがすべて枠にいけば凄いことになる。
LWG瀧澤千聖5.5今回は危険な匂いがしていた。遠慮はいらないので暴れまくってほしい。
OMF松原志歩6.0やればやっただけの成果が得られている。続けていれば大きなチャンスが来る。
CFW谷口木乃実5.0惜しいシュートがあったとはいえやはりプレーが単純で淡白過ぎる。
OMF齋原みず稀6.0持ち味を発揮することはできていた。もっと速くもっと激しくいけ。
RSB島袋奈美恵5.5出れば必ず活躍してくれている。先発で観たいものだが。
LWG立花葉6.5持ち前のメンタルの強さで決めたゴールだった。チームを救った。

2022-09-09

ハイプレスでWEリーグを席巻せよ

 9月4日の試合のレポートで紫熊倶楽部の中野さんが書いていた。レジーナもボールへの守備をやる方針だとのことである。今までそこがいまひとつハッキリしていなかった。監督も「前からのプレスは意識してやってきてはいる」と語っていたし、試合内容からみてもそれは十分に感じられてはいた。ただどこまでやるのか、どの程度徹底するのかがわからなかった。それが今回は明確になった。やる、のである。そしてその方針に応える決意を表明したのが松原志歩だったというわけだ。
 ハイプレスの徹底は高い効果を生むことは誰もが知っている。どのチームの監督もやりたくてやりたくてうずうずしているに違いない。ただ現在のところWEリーグでハイプレスの徹底を実現しているチームは未だ存在しない。昨年ではINAC神戸が最もそれに近かったが、それでもまだ部分的であり散発的なレベルであった。なので、カップ戦の第一節で愛川陽菜の守備から3点を奪ったのには度肝を抜かれたのである。この動きを見ると今年の神戸は密かにハイプレスを徹底する準備をしているのかもしれない。中島依美を出して脇阪麗奈を獲得したのもそう考えると腑に落ちるものがある。

 もちろん浦和にしてもベレーザにしても中盤の圧は極めて強い。彼女たちは長い長い年月をかけてその連係を練り上げてきて今の地位を築いている。ところがハイプレスの場合、それを裏返されるとその中盤の圧が抜けてしまうリスクがあるので浦和もベレーザも容易には転換できないだろう。その点ではわがレジーナは守るべきものもなければ失うものも少ない。

 ただしハイプレス戦術は選手たちに厳しい負荷をかける。レジーナにそれができるのだろうか。中村監督が1年以上を費やしてまだ本格導入に至っていないということはやはり相当の困難があるのであろう。

 なんと言っても最大の壁は契約の問題なのではないかと想像する。WEリーグはプロリーグだとはいえ、まだすべての選手とA契約を結べる状態にはなっておらず、各クラブともアマチュア契約の選手が少なからぬ数いるということなのだ。それはクラブ側の予算規模の問題もあるだろうが、それだけではなく選手の側もプロ契約を選択できない事情がある場合も少なくないようなので複雑だ。なにせなでしこジャパンのエース菅澤優衣香ですらクラブとはプロ契約を結んでいないのである。とうぜんのことながらサンフレッチェ広島でもこの問題は同じように存在するはずだ。

 プロ契約のない選手は生業を他に持っているのでサッカーのほうの負荷が高過ぎるとそちらに悪影響が出てしまうことが考えられる。したがってクラブ側は選手ひとりひとりの事情や状態をキメ細かに勘案しつつ全体のプランを立案し、そのうえでそのプランを日々のトレーニングに落とし込んでいく必要がある。号令一下、右向け右で、ついてこれない者は戦力外、という単純な図式は成立しない。前回の記事では落胆のあまり谷口木乃実に強い批判をしてしまったがもし彼女がA契約選手でないならこの点で筆者にも配慮が足りず陳謝しなければならないかもしれない。

 こうした事情がいろいろとあるにせよ、チームとしてはともかくもハイプレス戦術に舵を切ったのであるから今回はその実現可能性を見てゆこうと思う。

 

 
 まず最もハイプレス戦術に親和性の高い選手としては柳瀬楓菜が挙げられる。彼女のプレースタイルは高校の時からのものである。おそらく広島の強化部長は彼女の突出した運動量と球際の強さを見て我が意を得たりと手を叩いたに違いない。これこそ近未来の広島が必要とするスキルを持った選手であると。そして本人が広島を選んだのはそこが明確なオファーだったからではないかと思われるのである。ハイプレス戦術では前線の攻撃的な選手による強い守備が求められるわけだが、それだけでは失敗時の大きなリスクを担保することができない。現在の男子チームの好調の源泉はボランチの野津田岳人の運動量とボール奪取がきわめて高いレベルにあるからに他ならない。この存在がないと前線の選手は裏返されることが怖くて強度の高いプレスを敢行できないのである。ボランチでは小川愛も柳瀬のパートナーとしてうまく噛み合っており、この二人の存在で戦術遂行の基盤は十分にあると言えよう。さらに前節では松原志歩がこの二人に加わった。これで層としても厚くなりつつある。島袋奈美恵に関しては今までのところもっぱら左右のウイングで使われているが、このグループに入れてみたい気がする。また内田好美にも適性があるように感じられる。

 次に攻撃陣に関してだが、4月からのレジーナの快進撃の突破口となった選手こそ他ならぬ谷口木乃実であった。その意味で当然彼女には期待がかかる。戦術理解という意味でも彼女が牽引役になれるはずだと思うので、安定したパフォーマンスを発揮できればチーム力は格段に向上する。
 ポテンシャルの高さで言えば川島はるなの右に出る者はなかなかいないだろう。彼女がノジマステラ相模原にいた時代は菅野監督だった。菅野監督と言えば厳しい走り込みをさせることで有名だが、その走り込みで選手全員が青息吐息になっていても川島はるなだけはただひとり平然としていたというエピソードがある。彼女の足元の巧みさと相まってレジーナのスカウトの目にとまったのがその並外れた走力だっただろうことは想像に難くない。彼女がブレークスルーすると大きな戦力になるのは7月2日の記事でも書いたとおりだ。
 その記事の中には瀧澤千聖のことも書いているが、彼女についてはなんの心配もない。まさにハイプレス戦術にはうってつけの選手である。強化部が最初から獲得リストに挙げていたというのも大いにうなずける。中嶋淑乃についても基本的に現状のままで対応できそうである。微妙なのは大内梨央だが、キャラクターとしてはもともと元気印なのでひとたびはまると相当面白いことになりそうだ。その点では炎のドリブラー山口千尋も同様で大いに期待できる。立花葉は予測ベースで少し遠目から行く現状の守備スタイルもなかなか魅力的ではあるが、ボールに対しての守備となると少し転換が必要かもしれない。ただ使い分けができるようになるとプレースタイルの幅が格段に広がるのでトライしてみてほしい。現役の日本代表ならびに代表格である上野真実、増矢理花の両名はそんなことできないなどとは口が裂けても言わないだろう。ということでやれる選手は揃っているのである。あとは実行あるのみで、早く連係の熟度が問題になるところまで行ってほしいものである。

 ディフェンダーについては実はすでに対応が相当進んでいると筆者は見ているのだがいかがだろうか。松原優菜、塩田満彩はフィード力があり、佐山桃子については攻守両面で伸長が著しい。ただ昨年は相手チームのハイプレスによってかなり失点してしまっているので、その対処能力を高めるためにも攻撃陣の対応が急がれる状況だと考える。

2022-09-06

2022-23 WEリーグカップ第3節 S広島R 1 − 5 東京NB

 2022年の第1回WEリーグカップは公式戦とはいえ実のところはプレシーズンマッチである、そう思うほかはない。 
 1−5というスコアに関しては言うべきことはない。植木理子と藤野あおば、この二人が2点ずつ。特に植木の2つのゴールはどちらも見事というほかなく、対応した中村も佐山も為す術がなかった。さすがはA代表のエースと言うべきで絶賛に値するものだった。 

 この試合、上野真実がベンチに入っていない。前日の練習では別メニューになっていたそうなので怪我があるらしい。増矢理花ももう少しかかるという話がある。したがって一応先発はベストメンバーと言えなくもない。
 瀧澤千聖がベンチスタートでトップ下が松原志歩だったのは意外だったが、おそらく練習で成果のあった形なのであろう。その松原志歩は試合開始から猛烈な走りっぷりを見せていたので、後半は瀧澤に交代する予定のように見えた。そしてその頑張りが功を奏しベレーザのビルドアップは機能せず前半は川島はるなが押し込んだ先制点を守って1−0で折り返す上々の展開となった。 
 後半開始早々のコナーキックからの失点と続く53分藤野あおばに決められた失点はチームとして反省してもらうとして、58分の選手交代で川島を下げ、70分で中嶋淑乃を下げたのは何ゆえだったのか。川島は先制点の他にも再三ベレーザのゴールを脅かしており、ここまでの展開の中では得点の匂いを濃厚に放っていた唯一の選手である。その川島をあっさりと下げてしまった。ただそれはまだ理解できる。昨シーズンは後半で川島に交代を出すシーンが多かった。その継続で予定の采配だったのかもしれない。 
 そして70分で中嶋淑乃が下げられる。もちろん代わりに入った瀧澤千聖に不足はない。むしろ出すのが遅すぎるくらいである。問題は中嶋をピッチから失うことの意味である。中村監督は昨シーズン後半、中嶋を徹底的に使った。第19節のINAC神戸戦では両足が同時に痙攣して立ち上がれなくなるほど疲労困憊している中嶋を最後まで代えなかった。冷たいようにも思えたけれど中嶋に交代を出せない監督の気持ちもよくわかったものである。その中嶋をなぜ早々に替えてしまうのか。これを見て筆者は冒頭の感想を持った次第である。すなわちこれはテストマッチなのだと。


 今回は遠慮なく書く。勝つ気があるのなら替えるべきは谷口木乃実だったはずだ。この日の谷口は目を引くようなハードワークもなく、ボールタッチが少なく、プレーが単調でターゲットにもなれないので中盤の選手は前線にパスを出せず、やむなくボールを下げざるを得ないというシーンがしばしば見られた。しかしボールを下げさせられるとそこにはベレーザの名うてのアタッカーたちの網が待っているのである。チャンスは一瞬にしてピンチとなる。
 複雑なテクニックを駆使してDFを翻弄する植木と同じプレーをしろとまでは言わない。しかしほとんどなんの工夫もなくチャレンジもないならピッチに立つ資格はない。他の選手に機会を与えるべきだろう。瀧澤か大内が谷口に代わってトップに入っていたらどんなに期待が持てたことか。

 これぞストライカーというべき働きを見せた植木と前半決壊していた右サイドを建て直した上で自身も2発叩き込んでみせる藤野のベレーザに対し、ブレーキのワントップを残して勢いのある川島とまだまだ走れる中嶋を下げてしまったレジーナ。双方のFWにこれだけの差があれば1−5という結果は必然というものである。しかしこの試合はテストマッチなのでたぶんそこは問題ではないのだ。 

 U-20W杯で一部のチームから主力級の選手が抜かれている状態で始まったWEリーグカップである。グループBでは神戸も千葉もいろいろな試みをしているように見受けられた。だからタイトルを狙いに行くなら絶好の機会のはずだった。それなのにどうしてこういうことになるのだろう。たぶんWEリーグからプレシーズンマッチのつもりでやってくれという通達でもあったに違いない。

 ともかく、ベレーザという難敵に奢りを与えることには成功した。彼女たちが次回広島に来るときはきっと油断たっぷりで来てくれるだろう。レジーナはリーグ戦できっとこの借りを返してくれる、そう信じている。 


GK福元美穂5.0好セーブもたくさんあっただけに残念な結果だった。
RCB佐山桃子5.5プレスに対してのいなし方かわし方は去年とは別人のよう。
LCB中村楓5.0あの二人を止めるのは至難の業なのだがそれができないと勝てないのも事実。
RSB松原優菜5.0大きな破綻はなく前半の優位を下支えしたが、左足は不発気味だったか。
LSB木崎あおい5.5後半は足が止まっているように見えた。表情も優れない様子だったので心配だ。
DMF小川愛5.5入りではミスが目立ったがすぐに良くなった。大黒柱が健在でなにより。
DMF柳瀬楓菜5.5この人がもしいなかったらと考えると目の前が暗くなる。
RWG川島はるな6.0彼女がゴールする試合は勝てない、そんな悪いジンクスができないことを願う。
LWG中嶋淑乃5.5瀧澤と一緒に出るとどんなコンビネーションになるか楽しみだ。
OMF松原志歩6.0新しいサッカーをしようという意欲が素晴らしく効果もあった。続けてほしい。
CFW谷口木乃実4.5いまのままではチームが地獄に落ちる。とにかく工夫をしてほしい。
RWG立花葉5.0シュートの意識が高いのは良い。だがあの時大内の左のポケットががら空きだったのだ。
OMF大内梨央5.0クロスに合わせる以外の武器を獲得できればレギュラーが奪れる。奪ってくれ。
RSB塩田満彩5.0試合展開からして見せ場が少なくなってしまったがもっと大胆にプレーしてもいい。
LWG瀧澤千聖5.0大きな見せ場はなかったがボールロストは少なく連携の企図も見られた。
DMF近賀ゆかり5.0この試合では役割があまりにも難しかった。