2022-12-09

2022-23 WEリーグ第5節 東京NB 0 − 1 S広島R

 とてもとても大きな勝利だった。ただの勝点3ではない、もちろん同じ勝点3には違いないが、飛び切り大きい勝点3だ。 

 第3節浦和戦、負けはした。が、レジーナは手応えを掴んだ。ハイプレスの強い意識を持って戦えば、浦和を追い詰めるようなサッカーができる、そういう手応えだ。 

 続く第4節、神戸戦、それが確信に変わった。勝利こそすんでのところで逃したが、引き分けて勝点1をしっかりともぎ取った。この結果だけでも前節よりも前進している。失点も少ない安定した試合運びもできている。 

 そして今節、最も苦手な相手東京NBに勝利である。もちろん十分なできだとはとても言えない。たくさんシュートを打たれた末の辛勝ではある。しかし先のカップ戦では5点も取られたベレーザを完封しての勝ちなのだ。この勝利でもうベレーザは苦手な相手ではなくなった。そして大きいのはそれだけではない。

 浦和、INAC神戸、ベレーザの3チームを相手にしたこの3試合で得失点差0、勝点3の完全なイーブンなのである。 チームとしての今年の目標は「トップ3を狙う」である。まだリーグ戦は始まったばかりとはいえ、そのトップ3を相手に完全な五分五分であればここまでのところ目標を達成していると言っていい状況なのだ。 

 そしてもう一つ。いままでこのチームの宿痾でもあった「波」が消えつつあり、しかも守備が安定してきている。もちろん常勝チームになるためには攻撃力・得点力が必要だがそれは安定した守備ができた上でのことである。その肝心の守備がようやく安定してきたのはなによりの好材料だ。もとより選手層としては攻撃陣のほうが手厚いレジーナなので、もっとインテンシティの高いハイプレスができるようになればそこは自ずとついてくるはずだ。 

 いざ、進撃を開始せよ、サンフレッチェ広島レジーナ!


■木稲瑠那
 背番号1の完全復活。貴重な1点の端緒となるキックはほんとうに見事だった。

■近賀ゆかり
 目立った活躍はない。試合を見直してみても彼女の何が利いているのかよくわからない。しかし彼女が先発しているここ数試合は前述の通り安定しているのである。いぶし銀、とはこのことか。

■上野真実
 どうやらあの形は中嶋淑乃の最も得意とするパターンなのだろう。上野はそれを知っていてのあのヘディングとみた。

■呉屋絵理子
 ようやくプレーする姿を見ることができた。本当に嬉しい。次はスタートから観たい。

2022-11-28

2022-23 WEリーグ第4節 S広島R 1 − 1 I神戸

 終了直前に勝点3が掌中からこぼれ落ちてしまった。立花葉のドリブルによるペナルティエリアへの侵入から得たPKによる先制点をレジーナは守り切ることができなかった。

 89分のこのシーン、レジーナの守備に大きなミスがあったようには思えない。強いて言えば水野に対する警戒が薄くなっており、完全なフリーでボールを持たせてしまったというくらいか。しかしそれもすぐに立花が抑える態勢に入ったので水野の縦への仕掛けには十分対応できていた。ゴールまでは遠いので水野は縦にボールを運んでくるというのが立花の予測だったと思うが、水野は時間がないことを意識してボールを運ばずそのままクロスを入れてきた。立花としては裏を掻かれた形ではある。しかし普通ならこのクロスは成功しない。普通ならというのは、非凡なストライカーがいないならという意味だ。しかしあいにくINAC神戸には田中美南がいるのである。

 レジーナのGK木稲瑠那は田中が落ちてくるボールに間に合うと見てニアを警戒した。ここまで田中にニアへ何本も打たれているからだろう。実際タイミング的には間に合ったが田中の足はボールの軌道を変えることなくファー側へボールは流れゴールとなった。田中がGKの動きを見てボールに触れない選択をしたのかどうかはわからない。それは本人もよくわからないかもしれないようなそういう微妙なシーンだった。
 もちろんゴールを割られた木稲に責められるべきミスがあったわけではない。だがそこに田中美南が走り込んできていなかったら水野が入れたボールは木稲の手で無難に弾かれたことだろう。ストライカーの気合、実績、自信その他諸々の要素が総合した結果、攻守にわずかな差が生じた。


 ここまでなら前節対浦和戦の結論と大差はない。相手がやはり少しだけ強いのだということである。もちろんそれは誰に訊いてもそうなのだが、しかし前節と違って今回は引き分けである。
 勝ちを逃した選手たちは悔しそうで、ちょっぴり俯きがちに見えたが、強い強いINAC神戸、去年のチャンピオン神戸から勝点1を奪い取ったのだ。そこに注目したい。

 順序が逆になるが前述のとおり先制点は広島だった。62分、ボールを奪取したあとさらにドリブルで突破した上野真実からボールを預かりPEに入っていった立花を神戸のCB竹重杏歌理が倒してしまう。このPKを上野が決めてレジーナは先制に成功する。竹重は去年、リーグ戦の中でレギュラーを獲得してINACの鉄壁守備を実現した立役者だ。歳は19とまだ若いが実力はリーグ屈指と言って過言ではない。その竹重の守備を立花はわずかに上回った。

 実はこの結果にはそれに先立つ伏線があった。このシーンの少し前の56分、神戸の髙瀬愛美にイエローが出たあとのFKを小川愛が出し塩田満彩から縦に入ったボールを受けた立花がゴールライン際から突破を敢行。まずSB水野をかわした立花は止めに来たCB竹重をも抜き去り、さらに出てきたCB三宅史織まで抜いて中央にマイナスのクロスを出したのである。このプレーが神戸守備陣の度肝を抜きその心胆を寒からしめたことは疑いない。そして次の映像の'9:00からを見ていただきたい。ハームタイムで中村伸監督が立花葉その人に「勝負していい」「もうひとチャレンジできる」と指示を出しているのである。

 WEリーグが開幕して以来初めてスターティングメンバーに選ばれた立花はこの言葉でさらに自信を持っただろう。そしてチェレンジしたのである。この立花の潑剌としたチャレンジに一度やられてしまった竹重は二度目は絶対に負けまいとしてつい冷静さを欠いてしまった。勝負はほんとうに微妙なところで決着するものである。

 こうしてサンフレッチェ広島レジーナはINAC神戸と引き分けたのだ。まさに1対1なのだ。

 そして次節は苦手のベレーザである。ここでどういう試合ができるか、刮目してみようではないか。

■立花葉
 文句なく、この試合のヒロインだった。できれば永遠にこのままでいて欲しい。

■上野真実
 PKはミスキックだったが名手山下杏也加をして逆に飛ばせたあたりは再び爆発する予兆とみると頼もしい気がする。素晴らしいプレーがたくさん見られた。

■塩田満彩
 攻守に渡って安定感がある。謎なプレーは少なくなってきた。ただハンドを取られないように手の使い方は気をつけてほしい。

■近賀ゆかり
 先発なので少し不安を覚えたが始まってみるとその訳もわかった。さすがというほかない。が、他の選手には彼女を出させないようにがんばってほしいのだ。

2022-11-12

2022-23 WEリーグ第3節 浦和 2 − 1 S広島R

 試合を観終わったらすぐにこのブログを書こうと思っていたのだが、それができなかった。それだけこの試合は多くのことを物語っていた試合だった。想いは複雑である。

 浦和と広島、この両チームには残念ながらチーム力に差がある。ほとんどすべての選手が代表格、現役代表もしくは代表経験者である浦和に対して、広島ではそう言える選手が何人いるか。そうした戦力差では明らかに浦和のほうが強い。そしてその差の通りの試合結果となった。

 ではレジーナには勝ち目がなかったのか、といえばそうではない。少なくともレジーナの選手たちは気持ちの上で負けてはいなかった。だから終始苦しい展開ながらも一方的なスコアにはならなかった。実際、佐山桃子がファウルを取られたあのプレーさえなければ引き分けに終わり、勝点を分け合ったかもしれないのだ。


 では、この敗戦の原因は佐山にあるのかというと、そうではない。佐山のスライディングタックルは確かにボールに行っていた。ただ運の悪いことにボールは清家貴子の右足に当たり足元に残った状態になって清家が倒れる形になった。スライディングと同時にボールが外側に飛び出していればおそらくファウルにはならずPKを与えることもなかっただろう。しかし問題なのは、スライディングタックルに行った判断だ。清家がボールを受けペナルティエリアに侵入してきたときから佐山は清家にピッタリとついて並走しており、あの地点ではもはや角度がなくなっていたので、清家にシュートチャンスはほとんどなくなっていた。だからリスクの高いスライディングタックルでボールを弾く必要はなかったのだ。

 そうなるとますます佐山のミスだということになりそうだが、まさにこここそが彼我の力の差にほかならない。ゴールラインが近づいてしまって清家はおそらく迷っただろう。切り返してシュートを狙うか、それともシュートは諦めてコーナーキックを取りに行くか、あるいは後の味方にパスを出すか、どうしようか、と。そしてその迷いの瞬間を佐山は見逃さなかった。すかさずスライディングを敢行した。その瞬時の判断は見事なものだった。そしてチャンスと見たらチャレンジする意欲も素晴らしい。
 ただ、もし攻守が逆だったとしたら浦和のCBは同じようにスライディングをしただろうか。おそらくしていないのではないか。なぜならPKを与える危険性が高いからである。この差が浦和と広島の厳然たる力量差にほかならない。技術的な問題はほとんどない。気持ちの上でも負けてはいない。しかし最後のところで冷静な判断ができるかどうか、そういうわずかな差。ほんとうにそれは紙一重の差かもしれない。

 しかしこの差を埋めるのは一朝一夕ではできない。おそらく何年も彼女たちの背中を追い続け、努力を重ねなければならない。強化をし続けなければならない。そして5年後10年後に彼女たちと肩を並べるところまで到達できるかどうかだ。その長い旅路がいま始まった、あらためてそんな気がしたのである。

2022-10-30

2022-23 WEリーグ第2節 S広島R 1− 2 N相模原

 WEリーグの2年目は混戦の兆しを見せている。
 ノジマステラ相模原の出来が素晴らしかった。昨シーズン10位に沈んだチームとはとても思えない。ボールに対する寄せが速くしかもパワフルで球際が強い。パスの精度が高く、ボールのスピードも速い。広島は開始から30分間ほとんど何もさせてもらえなかった。
 相模原がこの試合で見せたパフォーマンスを安定的に維持できるのなら、INAC、レッズ、ベレーザからもある程度勝点を奪えるに違いない。

 この相模原と似たような印象を与えるのがASエルフェン埼玉だ。今節ではホームに新潟を迎えたが、やはり前半は新潟にほとんど攻撃の時間を与えていなかった。
 そして注目するべきはAC長野パルセイロLである。こちらは完全なハイプレス戦術。数少ないチャンスをきっちり決めたマイナビ仙台に勝点3を持って帰られてしまったものの、試合内容は完全に長野のペースで終始していた。フィニッシュのところの精度と強さが改善されれば攻撃力、得点力は相当なものになるはずで、それこそトップ3の一角を崩すことになるかもしれない。本当はレジーナにこのサッカーを先に実現してほしかったが、就任初年度にして早くもここまで作り上げてきている田代監督の手腕を褒めるべきなのだろうか。

 さて、こうした状況の中、早くも黄色信号が灯ったかに思える、レジーナ、どうする。


■塩田満彩
 素晴らしかった。相手に二人がかりで寄せられても慌てることなく対応したどころか、足技を繰り出して何度もプレスを剥がしていた。このあとトップ3との戦いになるが、今日のように自信を持ってプレーしてほしい。彼女は右サイドではプレーできないだろうか。

2022-10-25

2022-23 WEリーグ第1節 S広島R 2−1 千葉L

 サッカーはメンタルがモノをいう。まさにそういう試合だった。
開始1分30秒、千葉のコーナーキックのこぼれを瀧澤千聖が拾い左サイドで運び上がった。そして前線中央に走り込んでいた中嶋淑乃を狙ってクロスをあげる。結果、中嶋には当たらなかったが、このプレーには勢いがあった。これを見て、今日は負けない、そう思った。
 試合の入りは良くない。開始早々にコーナキックを取られ、3分には鴨川実歩にバーを叩かれるシュートを浴びてしまった。押し込まれ、再三ピンチを招くそんな立ち上がりではあったが、負ける気がしない。なぜなんだろう。しばらく観ていて腑に落ちた。選手たちが皆チャレンジをしているのである。球際もスルーパスも積極的にチェレンジしている。ロングボールも蹴らされているのではなく狙って蹴っている。ただ、うまくいっている、とは言い難い。縦パスは通らず、ボール奪取は成功せず、ロングボールはターゲットに収まらない。去年はホームでなかなか勝てなかった。選手たちの胸にはその苦しい思いがある。開幕戦がホーム開催となれば緊張するのはやむを得ない。みんな大小いろいろなミスをしている。その点ではのびのびとプレーしている千葉のほうが遥かにプレーの精度が高い。しかしそれでも、選手たちは気後れせずに粘り強くやっていたのだ。この気持ちが観る者に希望を与えてくれたのだと思う。
 37分コーナーキックから失点してしまう。それでも、これで終わりではない、いやむしろ面白くなった、そんな気さえした。そして後半開始直後の中嶋の劇的な得点が生じる。前半、出来が悪いながらも諦めずにチャレンジし続けた前向きな気持ちが生んだ得点だったように思う。

 レジーナは不思議なチームである。これだけプレー精度が悪いと普通は勝てないはずだと思うのだが、終わってみれば逆転勝利である。もちろん際どい勝ち方で、辛うじて拾った勝利である。スタッツを見る限りではシュート数は千葉の9に対してレジーナは5。CKは千葉の5に対しわずかに1。終始押し込まれた展開だったのかという数字である。だが試合を見返してみると前半も後半もけっこうな時間攻めている。ワントップの谷口木乃実には少なくとも3回は決定機があったし、上野真実にもチャンスがあった。これらの決定機に決められなかったのは仕方がない。けれど少なくともシュートが打てていればスタッツの数字から受ける印象もだいぶ変わったものになったはずだ。

 千葉は昨年4位の強豪。この強い相手に対して少々出来が悪くても勝ちをもぎ取ることができる。このチームにはそういう不思議なポテンシャルがある。それを感じることでワクワクできるから、レジーナにはファンが多いのだろう。プレーの精度が上がり、さらにチームがまとまってきたとき、このチームはどこまで行けるのだろうか。

・瀧澤千聖
 さすがはAC長野の背番号10である。カップ戦のときの借りてきた猫のような感じはいったいなんだったのか。開幕戦でしっかりとスタメンを勝ち取ったばかりでなく、チームを引っ張るプレーぶりは見事というほかない。レジーナに来てくれて本当にありがとう。

・中嶋淑乃
 POMは瀧澤に譲ったもののあのゴールは値千金。瀧澤と二人で10点など目標が低すぎる。今年は思い切り爆発してほしい。またいつものとおり守備での貢献がやはり光っている。84分相手GKが素早いスローで速攻態勢に入った瞬間スプリントを始めてプレスに戻り右サイドまで追いかけて千葉のカウンタを潰した守備は感動的だった。

・齋原みず稀
 プレーも正確だったしアイディアもあり判断も速かった。持ち味は出せていた。しかし今求められているのはそのレベルではないことに留意してほしい。谷口をスタメンから引きずり降ろさなければならないのだ。より激しくハイプレスに挑み、ポストプレーを磨いて欲しい。じっくりやっている時間はない。

・佐山桃子、中村楓
 この二人がいなければ負けていた。特に佐山は攻撃面でも効いていた。呉屋絵理子や森宙舞はここをこじ開けてこそ、なので全力で頑張ってほしい。

・増矢理花
 まだ試合勘が戻っていないのか。テンポが周りと少し違うような気がする。もちろん実力はこんなものではないはず。次節に期待したい。

・塩田満彩
 前半はフィードがあまり成功していなかった印象がある。そこは修正してほしいが、気合いの入った守備は観ていて気持ちが良かった。なにはともあれ開幕スタメンでフル出場を果たした。おめでとう。

・福元美穂
 自分のミスから大ピンチになったが、そこで守り切ろうとする姿には鬼気迫るものがあった。この局面もメンタルで相手を上回った結果のセーブだったと思う。控えの3選手は早くこの名キーパーに引導を渡して自分の時代を引き寄せろ。

2022-09-25

2022-23 WEリーグカップ 第6節 I神戸 2−1 S広島R

  この試合、レジーナについては言えることが少ない。ただひとつはっきりとわかったことがあるのでそれを書いておこうと思う。
 神戸の重鎮選手は誰かと問えば多くのひとがGK山下杏也加の名を挙げるであろう。なんといっても彼女はWEリーグの初代MVPであり、A代表でも不動の守護神である。もちろんその実力に疑いを差し挟む余地はない。
 彼女は入場時に上着を肩に引っ掛ける一風変わったスタイルで出てくる。この武張ったアウトロースタイルは強い彼女の強さの現れであるように見える。しかし本当の彼女はとても気が小さい。ピンチになるとドギマギしてしまうような気の弱い女の子なのだ。だから彼女は本当の自分=弱い自分が絶対に表に出てこないように自分自身をなんとか鼓舞しようとしてアウトローの真似などしているのである。自分は強いのだと自己暗示をかけ、周囲にもそうアピールすることで自ら退路を断ち自分を追い詰める。ここまでのことができる者は少ないだろう。他人には決して言えないそういう不断の努力が実を結んで女子サッカー界NO.1GKの地位を得るまでになった。まことに見事というほかない。



 30分の上野真実のゴールシーンを観ていただきたい。広島側左サイドから木崎あおいがワントップの谷口木乃実をめがけた長いパスを出す。しかしボールは谷口をマークしていた三宅史織が拾いGK山下にバックパスする。このボールがが少しだけ緩くなったので走ってきた谷口はスピードを落とさずそのまま山下まで追ってゆく。ここで名手山下にミスが出る。クリアしたつもりのボールがあろうことかフリーでいた上野の足元へ行ってしまったのだ。
 谷口のプレスはさほど強烈なものではなかった。谷口はボールに間に合わないことがわかった時点でスピードを緩めており、体をぶつけてでもボールを奪ってやろうという気迫は感じられない。したがってタイミング的にもさほど際どいものではなく山下にはいろいろな選択肢があったはずだ。大きく蹴り出すのもよし、トラップして谷口から離れるのもよし、フリーになっている三宅に戻してもよかった。でも彼女は慌ててしまう。あの瞬間もう彼女の視野には三宅の姿はなかったろうし、広島の選手がどこにいるかもわからなくなっていたのであろう。気の弱い本当の自分が表に出てきてしまったのである。
 思い返せば昨年度の2021-22WEリーグ第11節でもやはり谷口のプレスに対して山下がミスをするシーンがあった。その時は失点にはつながらなかったもののリーグ戦で初めての負け試合となってしまっている。いうまでもなくサッカーはメンタルスポーツ。日本一の守護神が動揺すればチーム全体が浮足立つ。

 INAC神戸レオネッサの最大のウィークポイントはGK山下杏也加である。

2022-09-23

2022-23 WEリーグカップ 第5節 S広島R 1ー1 千葉L

 前半は完全に千葉のペース。レジーナは絶望感を覚えるほどに攻撃が機能しない。ビルドアップはさせてもらえず、中盤にボールが渡っても前線までは届かずすぐに最終ラインにボールが戻ってくる。当然ながらそこも安心できる場所ではなく、ひやひやはらはらの連続で結局はロングボールを蹴り出す以外にできることがほとんどなかった。
 選手たちはどう思っただろう。千葉の選手たちは、今日は楽勝だ、きっとそう思ったに違いない。45分で1点しか入らなかったが、なにせまったくピンチにならないわけだからその1点だけで十分だとさえ思えたかもしれない。
 対するレジーナの選手たちは昨年シーズンの勝てなかった頃の気分が胸をよぎったりしていたのではないだろうか。

 しかし不思議なものである。後半に入ると少しずつ広島が前がかりになり始める。60分を過ぎた頃からは川島のスルーパスから決定機が生まれ中嶋の突破から木崎が走り込んで合わせるチャンスが生まれたりした。千葉のディフェンスはそれでも相変わらず堅かった。とはいえ前半のロングボールは影をひそめ、セカンドボールも広島が拾うことが多くなったのだ。
この変化はどう捉えたらよいのだろう。千葉の選手たちの足が止まったのだろうか。
 確かに前半、千葉の選手たちはよく走った。それがなければあれだけのプレスを効かせることはできない。しかしその分レジーナの選手たちだって追いまくられるように苦しい走りをしなければならなかったのだ。つまり運動量に大差はない。


 今期、男子チームのほうは後半の得点力の高さが際立っているが、これにはひとつ明白な理由を挙げることができる。それはハイプレスを徹底することで相手の守備的選手に強いストレスを与え続け、それが時間経過とともに集中力の持続を難しくするのである。それはおそらく肉体的疲労とは別のものなのだ。だから両チームの運動量に大差はなくても後半の攻防にその精神的疲労が如実に反映しているのである。
 だがそれが今回発生した、というわけではない。谷口木乃実はここ数試合では最も強く守備に行っていたし右の川島はるなもトップ下の上野真実もプレスに行く姿勢を見せてはいた。が、まだまだ強度も連動も足りておらず相手に恐怖の硬直を起こさせるにはほど遠かった。さらには最も強度の高いプレスができる松原志歩がいないのだから千葉のCBはさぞかし楽だったはずなのだ。

 そういうわけで、前半と後半の落差がどうにも納得できないのであるが、これがサッカーというスポーツの不思議なところなのかもしれない。

 今回は印象深かった選手にのみコメントしたい。

■谷口木乃実
 同点ゴールは見事だった。久々によくがんばったご褒美に神様があのゴールをくれたのかもしれない。得点できるかどうかはともかくとして毎試合今回のようなパフォーマンスが見られると嬉しい。

■中嶋淑乃
 彼女の美質のひとつが安定性にあるのだと痛感した。個々の選手もチーム全体もとにかく波が大きい中にあってその安定性はひときわ輝く。コンディションの維持にはくれぐれも注意してほしい。

■川島はるな
 また真っ先に交代になったが、何か理由があるのだろうか。彼女はスロースターターの典型だと思うのだ。今回もいつものように試合の入りが悪く、今日はダメかと思って見ていると少しずつ良くなってくる。20分くらいからミスが減り始め60分くらいからキレが格段に良くなり破壊力が増してきて尻上がりに調子が良くなる。前の試合も最後に逆転弾を叩き込んだわけだし、よしこれからだ、とおもっていると交代を出されてしまった。本当にもったいない。スロースターターなのは緊張癖なのかアップが足りないのかわからないが、この点、本人にも監督にもなんとか善処をお願いしたい。

  61:38 塩田から出たパスが強めなのをみてトラップをフェイクにし未来の自分のために敢えてボールに触らずに相手を抜いてゆくプレーをぜひご覧いただきたい。こういうプレーを連発する選手をあっさりと下げてしまう意図はどこにあるのか、目下レジーナ最大の謎となっている。

■塩田満彩
 中村楓になにがあったのかわからないが、無事代役が務まることを証明できた。たまに謎のプレーがあるが、それが致命的にならないなら、それも愛嬌があって魅力のひとつという気がしないでもない。  なんとなく彼女にCFをやらせてみたい気がする。破壊力抜群だったりしないだろうか。

■佐山桃子
 何度も書いているが成長著しいので続けて欲しい。ただたまになぜかパスが弱過ぎて大ピンチになるのでそこだけは改善してもらいたい。

■藤田七海
 アップの時の登場の仕方とか初々しくて嬉しくなった。ようやくベンチ入りまで漕ぎつけてきた感じだがこの勢いで福元美穂を乗り越えてほしい。

2022-09-11

WEリーグカップ第4節 N相模原 2−2 S広島R

 サッカーには劇的な試合というものが珍しくない。この試合もまさに劇的。84分間お互いに攻め手を欠いたというべきかお互いに良く守ったというべきか、ともかくも得点が生まれない拮抗した内容だった。
 しかし84分にステラ藤原加奈の見事なミドルシュートが炸裂したのを皮切りに最後の10分間で双方のチームに2ゴールづつが入るというそれまでとは打って変わった驚きの展開となった。

 とりわけ最後のステラのコーナーキックからの得点は不思議というほかはなかった。両チームの選手たちがGK福元美穂の前に密集する中、杉田亜未が蹴ったボールは約30度の角度でそのどまんなかに落ちてくる。ステラの選手たちはそのボールを押し込もうと思ったしレジーナの選手たちは弾き出そうと思った。それは確かだろう。しかし結果的には誰もそのボールに触ることができなかったのだ。まるでなにかの意志を持った生命体であるかのようにボールは地面に落ち、弾んでゴールの中に入っていった。杉田亜未のキックが素晴らしかった。それは間違えないのだが、10数人が密集しているにも関わらず誰もボールに触れなかったのはまことに不思議である。 
 



 ただ、こういう不思議な失点があったから勝てなかった、と言えるかというとそうではない。決定的なシーンが2つあった。
 ひとつめは28分、平野優花に広島側右サイドを抜け出されたシーン。たまたま平野がトラップミスをしてくれたので松原優菜が対応に間に合い事なきを得たが、平野のミスがなければGKとの1対1になるところだった。
 ふたつめは、左サイドを松本茉奈加に抜け出され上げられたクロスを中央で杉田亜未に頭で合わせられたシーン。数的不利はなかったにもかかわらず杉田は完全なフリーで、十分に首を振ってヘディングしていた。少し距離があったし正面でもあったのでGK福元もキャッチできたが、もしグラウンダーのクロスだったら強烈なシュートをもろに食らっただろう。
 いずれもショートカウンタを発動された形であるが、こうした守備破綻をなんとかしないといくら点をとっても勝てないということになってしまう。
 最後のワンプレーで不思議なことが起こったのは偶然ではなくて、サッカーの神様が勝つべき内容ではなかったぞと勝点3を取り上げたのかもしれない、そんな気がした。


GK福元美穂5.0守備連係の不備を修正していくことができるか注目したい。
RCB佐山桃子5.559分のピンチは裏返されてからマークの受渡しに失敗してのこと。
LCB中村楓5.0佐山が上がった先を把握していれば杉田をフリーにはさせなかったはず。
RSB松原優菜5.5地味ながら攻守に良い貢献ができている。もっと自信を持ってほしい。
LSB木崎あおい5.0気の所為なら良いのだが、溌剌とした感じがないのでやはり心配だ。
DMF小川愛5.5彼女の展開力はもはや欠かせない。怪我だけは気をつけてほしい。
DMF柳瀬楓菜6.0なんかおしゃれになってきたのか。その余裕でいけばゴールも決まる。
RWG川島はるな6.5守備面での貢献が素晴らしかった。シュートがすべて枠にいけば凄いことになる。
LWG瀧澤千聖5.5今回は危険な匂いがしていた。遠慮はいらないので暴れまくってほしい。
OMF松原志歩6.0やればやっただけの成果が得られている。続けていれば大きなチャンスが来る。
CFW谷口木乃実5.0惜しいシュートがあったとはいえやはりプレーが単純で淡白過ぎる。
OMF齋原みず稀6.0持ち味を発揮することはできていた。もっと速くもっと激しくいけ。
RSB島袋奈美恵5.5出れば必ず活躍してくれている。先発で観たいものだが。
LWG立花葉6.5持ち前のメンタルの強さで決めたゴールだった。チームを救った。

2022-09-09

ハイプレスでWEリーグを席巻せよ

 9月4日の試合のレポートで紫熊倶楽部の中野さんが書いていた。レジーナもボールへの守備をやる方針だとのことである。今までそこがいまひとつハッキリしていなかった。監督も「前からのプレスは意識してやってきてはいる」と語っていたし、試合内容からみてもそれは十分に感じられてはいた。ただどこまでやるのか、どの程度徹底するのかがわからなかった。それが今回は明確になった。やる、のである。そしてその方針に応える決意を表明したのが松原志歩だったというわけだ。
 ハイプレスの徹底は高い効果を生むことは誰もが知っている。どのチームの監督もやりたくてやりたくてうずうずしているに違いない。ただ現在のところWEリーグでハイプレスの徹底を実現しているチームは未だ存在しない。昨年ではINAC神戸が最もそれに近かったが、それでもまだ部分的であり散発的なレベルであった。なので、カップ戦の第一節で愛川陽菜の守備から3点を奪ったのには度肝を抜かれたのである。この動きを見ると今年の神戸は密かにハイプレスを徹底する準備をしているのかもしれない。中島依美を出して脇阪麗奈を獲得したのもそう考えると腑に落ちるものがある。

 もちろん浦和にしてもベレーザにしても中盤の圧は極めて強い。彼女たちは長い長い年月をかけてその連係を練り上げてきて今の地位を築いている。ところがハイプレスの場合、それを裏返されるとその中盤の圧が抜けてしまうリスクがあるので浦和もベレーザも容易には転換できないだろう。その点ではわがレジーナは守るべきものもなければ失うものも少ない。

 ただしハイプレス戦術は選手たちに厳しい負荷をかける。レジーナにそれができるのだろうか。中村監督が1年以上を費やしてまだ本格導入に至っていないということはやはり相当の困難があるのであろう。

 なんと言っても最大の壁は契約の問題なのではないかと想像する。WEリーグはプロリーグだとはいえ、まだすべての選手とA契約を結べる状態にはなっておらず、各クラブともアマチュア契約の選手が少なからぬ数いるということなのだ。それはクラブ側の予算規模の問題もあるだろうが、それだけではなく選手の側もプロ契約を選択できない事情がある場合も少なくないようなので複雑だ。なにせなでしこジャパンのエース菅澤優衣香ですらクラブとはプロ契約を結んでいないのである。とうぜんのことながらサンフレッチェ広島でもこの問題は同じように存在するはずだ。

 プロ契約のない選手は生業を他に持っているのでサッカーのほうの負荷が高過ぎるとそちらに悪影響が出てしまうことが考えられる。したがってクラブ側は選手ひとりひとりの事情や状態をキメ細かに勘案しつつ全体のプランを立案し、そのうえでそのプランを日々のトレーニングに落とし込んでいく必要がある。号令一下、右向け右で、ついてこれない者は戦力外、という単純な図式は成立しない。前回の記事では落胆のあまり谷口木乃実に強い批判をしてしまったがもし彼女がA契約選手でないならこの点で筆者にも配慮が足りず陳謝しなければならないかもしれない。

 こうした事情がいろいろとあるにせよ、チームとしてはともかくもハイプレス戦術に舵を切ったのであるから今回はその実現可能性を見てゆこうと思う。

 

 
 まず最もハイプレス戦術に親和性の高い選手としては柳瀬楓菜が挙げられる。彼女のプレースタイルは高校の時からのものである。おそらく広島の強化部長は彼女の突出した運動量と球際の強さを見て我が意を得たりと手を叩いたに違いない。これこそ近未来の広島が必要とするスキルを持った選手であると。そして本人が広島を選んだのはそこが明確なオファーだったからではないかと思われるのである。ハイプレス戦術では前線の攻撃的な選手による強い守備が求められるわけだが、それだけでは失敗時の大きなリスクを担保することができない。現在の男子チームの好調の源泉はボランチの野津田岳人の運動量とボール奪取がきわめて高いレベルにあるからに他ならない。この存在がないと前線の選手は裏返されることが怖くて強度の高いプレスを敢行できないのである。ボランチでは小川愛も柳瀬のパートナーとしてうまく噛み合っており、この二人の存在で戦術遂行の基盤は十分にあると言えよう。さらに前節では松原志歩がこの二人に加わった。これで層としても厚くなりつつある。島袋奈美恵に関しては今までのところもっぱら左右のウイングで使われているが、このグループに入れてみたい気がする。また内田好美にも適性があるように感じられる。

 次に攻撃陣に関してだが、4月からのレジーナの快進撃の突破口となった選手こそ他ならぬ谷口木乃実であった。その意味で当然彼女には期待がかかる。戦術理解という意味でも彼女が牽引役になれるはずだと思うので、安定したパフォーマンスを発揮できればチーム力は格段に向上する。
 ポテンシャルの高さで言えば川島はるなの右に出る者はなかなかいないだろう。彼女がノジマステラ相模原にいた時代は菅野監督だった。菅野監督と言えば厳しい走り込みをさせることで有名だが、その走り込みで選手全員が青息吐息になっていても川島はるなだけはただひとり平然としていたというエピソードがある。彼女の足元の巧みさと相まってレジーナのスカウトの目にとまったのがその並外れた走力だっただろうことは想像に難くない。彼女がブレークスルーすると大きな戦力になるのは7月2日の記事でも書いたとおりだ。
 その記事の中には瀧澤千聖のことも書いているが、彼女についてはなんの心配もない。まさにハイプレス戦術にはうってつけの選手である。強化部が最初から獲得リストに挙げていたというのも大いにうなずける。中嶋淑乃についても基本的に現状のままで対応できそうである。微妙なのは大内梨央だが、キャラクターとしてはもともと元気印なのでひとたびはまると相当面白いことになりそうだ。その点では炎のドリブラー山口千尋も同様で大いに期待できる。立花葉は予測ベースで少し遠目から行く現状の守備スタイルもなかなか魅力的ではあるが、ボールに対しての守備となると少し転換が必要かもしれない。ただ使い分けができるようになるとプレースタイルの幅が格段に広がるのでトライしてみてほしい。現役の日本代表ならびに代表格である上野真実、増矢理花の両名はそんなことできないなどとは口が裂けても言わないだろう。ということでやれる選手は揃っているのである。あとは実行あるのみで、早く連係の熟度が問題になるところまで行ってほしいものである。

 ディフェンダーについては実はすでに対応が相当進んでいると筆者は見ているのだがいかがだろうか。松原優菜、塩田満彩はフィード力があり、佐山桃子については攻守両面で伸長が著しい。ただ昨年は相手チームのハイプレスによってかなり失点してしまっているので、その対処能力を高めるためにも攻撃陣の対応が急がれる状況だと考える。

2022-09-06

2022-23 WEリーグカップ第3節 S広島R 1 − 5 東京NB

 2022年の第1回WEリーグカップは公式戦とはいえ実のところはプレシーズンマッチである、そう思うほかはない。 
 1−5というスコアに関しては言うべきことはない。植木理子と藤野あおば、この二人が2点ずつ。特に植木の2つのゴールはどちらも見事というほかなく、対応した中村も佐山も為す術がなかった。さすがはA代表のエースと言うべきで絶賛に値するものだった。 

 この試合、上野真実がベンチに入っていない。前日の練習では別メニューになっていたそうなので怪我があるらしい。増矢理花ももう少しかかるという話がある。したがって一応先発はベストメンバーと言えなくもない。
 瀧澤千聖がベンチスタートでトップ下が松原志歩だったのは意外だったが、おそらく練習で成果のあった形なのであろう。その松原志歩は試合開始から猛烈な走りっぷりを見せていたので、後半は瀧澤に交代する予定のように見えた。そしてその頑張りが功を奏しベレーザのビルドアップは機能せず前半は川島はるなが押し込んだ先制点を守って1−0で折り返す上々の展開となった。 
 後半開始早々のコナーキックからの失点と続く53分藤野あおばに決められた失点はチームとして反省してもらうとして、58分の選手交代で川島を下げ、70分で中嶋淑乃を下げたのは何ゆえだったのか。川島は先制点の他にも再三ベレーザのゴールを脅かしており、ここまでの展開の中では得点の匂いを濃厚に放っていた唯一の選手である。その川島をあっさりと下げてしまった。ただそれはまだ理解できる。昨シーズンは後半で川島に交代を出すシーンが多かった。その継続で予定の采配だったのかもしれない。 
 そして70分で中嶋淑乃が下げられる。もちろん代わりに入った瀧澤千聖に不足はない。むしろ出すのが遅すぎるくらいである。問題は中嶋をピッチから失うことの意味である。中村監督は昨シーズン後半、中嶋を徹底的に使った。第19節のINAC神戸戦では両足が同時に痙攣して立ち上がれなくなるほど疲労困憊している中嶋を最後まで代えなかった。冷たいようにも思えたけれど中嶋に交代を出せない監督の気持ちもよくわかったものである。その中嶋をなぜ早々に替えてしまうのか。これを見て筆者は冒頭の感想を持った次第である。すなわちこれはテストマッチなのだと。


 今回は遠慮なく書く。勝つ気があるのなら替えるべきは谷口木乃実だったはずだ。この日の谷口は目を引くようなハードワークもなく、ボールタッチが少なく、プレーが単調でターゲットにもなれないので中盤の選手は前線にパスを出せず、やむなくボールを下げざるを得ないというシーンがしばしば見られた。しかしボールを下げさせられるとそこにはベレーザの名うてのアタッカーたちの網が待っているのである。チャンスは一瞬にしてピンチとなる。
 複雑なテクニックを駆使してDFを翻弄する植木と同じプレーをしろとまでは言わない。しかしほとんどなんの工夫もなくチャレンジもないならピッチに立つ資格はない。他の選手に機会を与えるべきだろう。瀧澤か大内が谷口に代わってトップに入っていたらどんなに期待が持てたことか。

 これぞストライカーというべき働きを見せた植木と前半決壊していた右サイドを建て直した上で自身も2発叩き込んでみせる藤野のベレーザに対し、ブレーキのワントップを残して勢いのある川島とまだまだ走れる中嶋を下げてしまったレジーナ。双方のFWにこれだけの差があれば1−5という結果は必然というものである。しかしこの試合はテストマッチなのでたぶんそこは問題ではないのだ。 

 U-20W杯で一部のチームから主力級の選手が抜かれている状態で始まったWEリーグカップである。グループBでは神戸も千葉もいろいろな試みをしているように見受けられた。だからタイトルを狙いに行くなら絶好の機会のはずだった。それなのにどうしてこういうことになるのだろう。たぶんWEリーグからプレシーズンマッチのつもりでやってくれという通達でもあったに違いない。

 ともかく、ベレーザという難敵に奢りを与えることには成功した。彼女たちが次回広島に来るときはきっと油断たっぷりで来てくれるだろう。レジーナはリーグ戦できっとこの借りを返してくれる、そう信じている。 


GK福元美穂5.0好セーブもたくさんあっただけに残念な結果だった。
RCB佐山桃子5.5プレスに対してのいなし方かわし方は去年とは別人のよう。
LCB中村楓5.0あの二人を止めるのは至難の業なのだがそれができないと勝てないのも事実。
RSB松原優菜5.0大きな破綻はなく前半の優位を下支えしたが、左足は不発気味だったか。
LSB木崎あおい5.5後半は足が止まっているように見えた。表情も優れない様子だったので心配だ。
DMF小川愛5.5入りではミスが目立ったがすぐに良くなった。大黒柱が健在でなにより。
DMF柳瀬楓菜5.5この人がもしいなかったらと考えると目の前が暗くなる。
RWG川島はるな6.0彼女がゴールする試合は勝てない、そんな悪いジンクスができないことを願う。
LWG中嶋淑乃5.5瀧澤と一緒に出るとどんなコンビネーションになるか楽しみだ。
OMF松原志歩6.0新しいサッカーをしようという意欲が素晴らしく効果もあった。続けてほしい。
CFW谷口木乃実4.5いまのままではチームが地獄に落ちる。とにかく工夫をしてほしい。
RWG立花葉5.0シュートの意識が高いのは良い。だがあの時大内の左のポケットががら空きだったのだ。
OMF大内梨央5.0クロスに合わせる以外の武器を獲得できればレギュラーが奪れる。奪ってくれ。
RSB塩田満彩5.0試合展開からして見せ場が少なくなってしまったがもっと大胆にプレーしてもいい。
LWG瀧澤千聖5.0大きな見せ場はなかったがボールロストは少なく連携の企図も見られた。
DMF近賀ゆかり5.0この試合では役割があまりにも難しかった。

2022-07-02

川島はるなの黒船

 なぜ代表に呼ばれないのか、そういう声がある。川島はるなに惚れ込んでいるファンは多い。もちろん私もそのひとりである。でも私は彼女が代表に呼ばれない理由を知っている。代表監督にじかに訊いてみた、わけではない。完全なる推測である。単なる個人的推測ではあるが、おそらく間違っていないという自信はある。

 川島はるなが代表に招集されないわけは協会幹部に嫌われているから、とかではない。もっと単純な理由なのだ。それはフィジカルが弱いからである。体格がでかい外国勢に負けないためには彼女のように小さくて細い選手では戦えないのだ。というと岩渕真奈はどうなのだ、長谷川唯だって小さいぞと反論されてしまいそうである。そのとおり。岩渕や長谷川は川島と体格的にはほとんど変わらない。もちろん国内からの招集メンバの中にも小柄な選手はたくさん存在する。では彼女たちと川島はるなの決定的なちがいはどこにあるのだろうか。ボールコントロールの上手さでは誰にも引けを取らないのが川島はるなである。

 その答えは、自分はフィジカルが弱い、と思っているかどうかというところにあるのだ。もちろん岩渕にしても長谷川にしても自分は肉弾戦が得意だとは思っていないだろうし、冷静に判断すればやはりそこは弱点の一つだという自覚はあるに違いない。しかし少なくとも彼女たちは相手選手との接触を厭わないプレーができる。だが対する川島はるなはその点においてはなはだ物足りないのである。川島には人並み外れた足元の上手さがありプレーのアイディアも豊富にある。なのでガツガツと体をぶつけるプレーを回避しながらでもある程度のことはできてしまう。しかしそのプレースタイルでは代表に呼ばれないのは当然だ。フィジカルではたとえ勝てなくても少なくとも気持ちの上では上回っていてくれないと選抜の対象にはできないわけだ。ただ、代表には呼ばれなくてもチームの中心選手としてならそういうスタイルで十分やってこられた。今までは、である。ところがもはやそんな時代ももう終わってしまった。

 広島に瀧澤千聖がやってきた。川島はるなにとっては太平の夢を破る黒船だ。同じリーグの他チームで10番を背負っていた選手が新加入してきたインパクトは測り知れず大きい。彼女のポジションを予想する中野さんの記事ではもはや川島の名はピッチ上から消え失せているのである。
そして瀧澤千聖が黒船である所以がもうひとつある。サッカーが変わったのだ。黒船はただ単に強いだけではない。黒船の黒船たる所以は世界情勢の変化を象徴しているところにある。その力はもはや個人のあがきなどでは抗うことのできない大きな流れなのだ。江戸幕府による250年間の天下泰平。その中にいた日本人は世界が激変激動していることなど気づかないで夢の中にいた。その夢を突如として浦賀に現れた黒い大きな船団が大砲の音とともに破ったのだった。

 サッカーに話を戻そう。ハイライン・ハイプレス、これがこの春からのサンフレッチェのサッカーである。もちろんサンフレッチェだけのことではない。世界のサッカーがその徹底と完成を図って本格的に競い合いを始めたのが最近のフットボールである。具体的にいえば、攻撃的な選手は相手の守備ラインに襲いかかってボールを奪い取る、これができない選手は試合に出してもらえないのである。どんなに足元が巧くてもどんなにファンタジックなプレーができても、目の前の相手からボールを奪いにいかない選手はダメなのだ。瀧澤千聖はそういうプレーができる、いや、むしろそれが得意な選手である。

 さて、川島はるなよ。目を覚ます時は来た。江戸の海にあらわれた黒船を見て日本人たちはみな震え上がりこぞって奴隷になったか。そうではなかった。新しい時代を切り拓くべく猛烈な攘夷倒幕運動が巻き起こったのである。

 川島はるなよ、君はどうする。いさぎよく瀧澤千聖にポジションを譲ってサブにおさまって満足するか。それとも接触プレーをなるべく避けてきたプレースタイルをかなぐり捨てて新しいフットボールの体現者になるか。どちらかだ。後者の道は険しい。凡百の者には絶望的な選択かも知れない。でも君はファンタジスタ、サッカーの申し子だ。君のテクニックがあれば球際の魔術師にだってなんにだってなれるはず。そしてその地平が開けた時、今まで叶わなかった夢が叶うに違いないのである。

 

 

 この映像を観るとこの歴史的な試合の立役者が誰であったのか改めて気付かされる。黒船に大砲を撃ちまくらせるためにも川島はるなの飛躍は絶対に必要なのだ。

2022-06-24

WEリーグを失敗させるわけにはいかない

 
2021-22 Yogibo WEリーグ入場者数
クラブ動員数順位
神戸315841
大宮227889
浦和213242
東京NB168803
千葉136994
広島123306
長野117507
仙台117335
埼玉1038511
新潟95738
相模原955512
平均17160-

 これは2021-2022年度の各クラブごとの年間観客動員数である。戦慄する。大宮の動員数が多く仙台が少ないことを除けば順位との相関関係が強く感じられる結果である。大宮はスター選手が多いのでそのぶん人気があるのは納得できるところだ。仙台については少しさみしい結果だが、武田菜々子選手の弁によると東北出身の選手は数少ないとのことなのでそうした地域の事情が動員数に反映しているのかもしれない。繰り返しになってしまうがこの2チームを除けばほぼ成績順になる。やはり観客を集めるには、勝ちまくるしかないのだろうか。いや逆に勝ちさえすればお客さんは入ってくれるのだろうか。そこで気になるのが東京NBの数字である。東京NBの総動員数16880人は平均の17160人をやや下回っている。これは実に深刻な事態だと思う。 

 東京NBがホームで使うスタジアムは西が丘である。屋根がないので雨の日には弱いもののサッカー観戦には理想のスタジアムと言っていい。東京という人口ボリュームのある地域のど真ん中で交通至便の専用スタジアム。そしてそこで試合をするのが女子サッカーを牽引し続けてきたクラブ、東京NBである。首都圏のサッカー少女たちがこぞってセレクションを受けるのがこのクラブなのだ。浦和や神戸も力があるとはいえやはりこのクラブが日本の最高峰であることに異論の余地はないだろうと思う。当然ながらチームも強く、代表経験のあるトップスターたちが集っている。観客を集める上で有利な条件が揃っているのだ。そうした背景を考えればリーグ戦の順位が何位であっても観客動員だけはずば抜けていて不思議ではないのである。しかし現実は3位という成績順位と相当する程度の動員数しかない。これが何を意味するのか。おそらく来年度、東京NBが勝ちまくって優勝したとしてもおそらく飛躍的な数字にはならないのではないだろうか。つまり16880名というこの数字の内訳は現役プレーヤーの身内・関係者がほとんどであって、一般のファンはほんの少ししか存在しないのである。チームが勝ちまくった結果その少しのファンが倍になったところでそれは年間通した延べ人数で数千人程度にしかならない。残念ながらこれがWEリーグの戦慄すべき現状なのである。 

 云わずと知れたことではあるが筆者は東京NBの運営や経営が悪いのだと主張しているわけではない。他のクラブもみな同じ、わがサンフレッチェ広島レジーナとてもちろん例外ではない。要するに女子サッカーはまったくと言っていいほど注目されておらず、世間から完全に置き去りにされているわけである。この状況を続けていれば数年後は撤退するクラブが相次ぐような事態にもなりかねない。 

 動員数1位の神戸は、5月14日の第21節、国立競技場を使って12330人を集めたが、その8割が招待客であったと噂されている。そしてこのことでINAC神戸を批判したり嘲笑したりする向きもあるようだ。もちろん8割が招待客などという状態は異常であるし、それでよいなどとはとても言えたものではない。しかし、なにはともあれ今はとにかく世間の耳目を引くことを考えなければならないのだ。だからがんばって12330人を集めたINAC神戸には拍手を送りたい。そしてわが広島もそれに続こう。この魅力あるWEリーグを失敗させるわけにはいかないのだから。

2022-06-13

瀧澤千聖選手が完全移籍加入

  このニュースには驚いた。びっくり仰天とはこのこと。改めて言うまでもなく瀧澤千聖はAC長野パルセイロ・レディースの主力選手である。
 もちろん嬉しい。大歓迎だ。能力的には文句のつけようがなく即戦力であり、そのうえ才能的にみれば日本女子サッカー界全体でも注目の集まる最大級の逸材といっていい。それはすでに美しいとはいえまだ蕾。その巨大な潜在能力が大輪の花を咲かせる時を世界が固唾を飲んで見守っている、そういう選手だ。

 ネット民のあいだでも当然のことながら好意的に受け止められてはいる。ただ、補強ポイントはそこではない、という意見もあるのである。確かにそうかもしれい。上野、谷口、中嶋、川島、立花、島袋、山口、大内、そしてもうすぐ怪我から復帰するであろう増矢、とそれぞれ特長は違っても攻撃的な選手は起用するには事欠かないのが現在の状態。だから優先順位としては守備的な選手をまずは入れたいところである。強化スタッフはなにかを間違えたのだろうか。もちろんそうではない。開幕戦で増矢を失ってからの得点力の不足はまことに深刻だったのだ。そして後半戦開始からは無得点で4連敗を喫して、もはや無策でいることが許されない事態となってしまった。おそらくこの時期からフロントは得点力アップを目指して補強を行うべく猛烈な活動を展開し始めたに違いない。そしてその成果が瀧澤千聖の獲得だった。しかしあに計らんや。そういうフロントの水面下での努力を知ってか知らずか、チームは真っ暗なトンネルを抜けて素晴らしい見晴らしの舞台へと出たのであった。そういう意味でフロントは、チームが劇的な大成長を遂げるという未来予測を見誤ったのかも知れない。だがそれは神のみぞ知る事であったはずで、嬉しい誤算なのだ。いやむしろチームがいずれは苦境から抜け出すことがわかっていたとしてもそれに保険をかける動きをするのがフロントの役割なのであって、すばらしい仕事をしたわけである。いずれにしろ来期はさらにチーム内の競争にエネルギーが加わることになり、大いに楽しみである。

 しかし本来であれば主力級の選手を補強するからにはやはり主力選手の放出・流出があるのだろうとする見かたができる。そうなると瀧澤千聖選手とかぶるのはポジション的にもプレースタイル的にもまずは中嶋淑乃だ。やはり中嶋がどこかに引き抜かれてしまうのかと不安にもなる。だが本人からは残留宣言が出ているようなので、当面その心配はしなくてよいらしい。そうなると次には上野が危ぶまれる。ストライカーの不在に悩むチームは多いので上野にはさぞかしオファーが殺到していることだろう。だがなんとかもう一年くらいは広島にいてくれないだろうか。いまはそれを祈るのみである。
 また長野については五嶋京香選手の移籍も伝えられている。瀧澤千聖もそのことは知っていただろうと想像するとその胸中の複雑な思いが察せられて余りある。だがきっと瀧澤選手であればそういう辛い思いもフットボールへの熱に変換できるだろうと思う。
 先にも書いたが長野とは来年も鎬を削る間柄でありたいと切に願っている。この点では長野を離れる選手たちと気持ちは同じなのである。

2022-06-06

パス23本で生んだ、ベストゴール

  【みんなで選ぶベストゴール!】がWEリーグのホームページで開催されている。
 一般視聴者に投票権があり、「いいね」の数で大賞が決まるというので、ぜひ皆さん「いいね」で投票して欲しい。

 今期全24ゴールの中からこのゴールを選んだのはクラブだとのことである。以下がそのコメント。

クラブからのコメント▼
チームで取り組んで来た形で、相手の出方を窺いながら、流れの中で複数の選手が絡み、パス23本、約1分20秒間、相手に触らせずにゴールを奪えた形なので選びました。  


 このクラブからのコメントを読んでみなさんどんな感想をお持ちだろうか。私は何回読んでも思わず目頭が熱くなる。
 そうなのだ。これがレジーナの魅力なのだ。
 ビルドアップにこだわり、GKから最前線まで美しくパスをつなぐスタイル。それがレジーナのサッカー。
 たくさんの選手が絡み、みんなで勝利を掴み取る。それがレジーナの連帯。
 相手に触らせもしないような圧倒する展開を目指す。それがレジーナの強さ。
 そして全員が同じ気持ちになる。それがレジーナの共感。
 
 もちろん簡単にできることではない。事実、ビルドアップを狙われてたくさん失点もした。相手チームはどこもみな強く圧倒などさせてはもらえないどころか、ともすればこちらが圧倒される試合も多かった。
 しかし、それでもあきらめずにやり続けた。その結果はどうなったか。それが第17節以降の爆発である。その爆発の中でこのゴールが生まれた。まさにベストゴール。パス23本で生んだ、これぞ誇るべきベストゴール。

2022-06-05

2021-22 WEリーグ ワタクシ的優秀選手賞(25名)

以下はサンフレッチェ広島レジーナ以外のチームからの選出です。
当然のことながら、選考基準は、(私が)優秀だと思った、です。あるいは、好き、なだけの人も。
もちろん名前を挙げたい人はもっともっといますが、きりがないので、いちおう27-2名に絞りました。



GK

池尻 凪沙(ノジマステラ神奈川相模原)
なぜかルックスを男性っぽく倒しているGKが多い中、きわめて女性っぽいところがユニークで好感。


DF

竹重 杏歌理(INAC神戸レオネッサ)
観ていて楽しい。なぜかはハッキリしない。でもそういうぼんやりした魅力があるというのはとても素敵なことだ。


守屋 都弥(INAC神戸レオネッサ)
スピード、技術、運動量、どれをとっても観ていて痛快。ただその割には成功率が今ひとつなところがメッチャかわいい。 

 

清家 貴子(三菱重工浦和レッズレディース)
11番を付けてSBをやっている姿はカッコいいの一言。彼女にゴールされた時はシビレた。


清水 梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
守備はもちろんのこと、攻撃参加時の質が恐ろしく高い。認めないわけにはいかない。


五嶋 京香(AC長野パルセイロ・レディース)
彼女のいないAC長野は想像がつかない。いやむしろ日本女子サッカー界全体の宝のような気がする。


岩下 胡桃(AC長野パルセイロ・レディース)
最終節で初めて彼女の存在を知った。解説者が激賞していたがまったくそのとおりだと思った。長野は良い選手を獲った。


大賀 理紗子(ノジマステラ神奈川相模原)
この人の守備は強い。攻撃する側としてはハッキリいうと憎たらしい。でも憎めない。いやむしろ彼女にやられると爽快だ。



MF

伊藤 美紀(INAC神戸レオネッサ)
第11節で広島が神戸に勝てた要員の一つは上野・柳瀬・小川で彼女を封殺したところにもあったように思える。


安藤 梢(三菱重工浦和レッズレディース)
ここぞという時に決定的な仕事をする。さすがというほかない。ポスト安藤は今のレッズにはいるのだろうか。


塩越 柚歩(三菱重工浦和レッズレディース)
守る立場からすると彼女ほど嫌な存在は他にいない。だからここに名前を挙げざるをえない。


猶本 光(三菱重工浦和レッズレディース)
レッズの中心はなんといってもこの人なのだろうと思う。そういう人を落とすわけにはいかない。


岸川 奈津希(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
6得点。守備的な選手でここまで得点するとは見事という他はない。利き足は頭!? すごすぎる。


曽根七海(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
地味な存在だがジェフが安定した成績を残せたのは彼女が担った役割が大きかったのではないか。


瀧澤 千聖(AC長野パルセイロ・レディース)
この人には切れ味の良さをはるかに超えた爆発力のようなものがあるように感じる。しょっちゅう爆発したらすごいことになる。


肝付 萌(AC長野パルセイロ・レディース)
体は小さいのに総合能力が高い。こういう選手を見るとサッカーは体格ではないなと思って安心する。


仲田 歩夢(大宮アルディージャVENTUS)
A代表の経験がないのがなぜだろう。ボールの精度、判断の速さ、足元の巧さ、シュート、すべてにおいて息を呑むほど秀逸なのに。


脇阪 麗奈(ノジマステラ神奈川相模原)
開幕戦を観て感動した。後半もう勝つ見込みが無くなり両チームとも足が止まっている状況の中でたった一人最後まで走り回っていた。


小林 海青(ノジマステラ神奈川相模原)
川島はるなと似たところがあるファンタジスタタイプ。思えば一昨年まではこの二人が同じチームでプレーしていた。見ておけばよかった。


吉田 莉胡(ちふれASエルフェン埼玉)
この人の登場にはいろいろな意味がある。「新しい日本のキックオフ」を謳うWEリーグを象徴する選手だと思う。


三浦 桃(ちふれASエルフェン埼玉)
ラブリッジにいい選手がいるなと思っていたら、リーグ後半からエルフェンに加入してエルフェンが強くなった。嬉しい。



FW

田中 美南(INAC神戸レオネッサ)
日本代表のエースが復活した後半戦だった。シュートのうまさ、決定力の高さはやはり目を見張るものがある。


菅澤 優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)
初代得点女王はやはりこの人。思わず肯いてしまう。納得せざるをえない、そういう結果である。おめでとう菅澤選手。


千葉 玲海菜(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
スピード、決定力、裏抜けのうまさ、三拍子揃ったすごい選手が出てきてしまった。大澤春花からポジションを奪うとは驚いてしまう。


白木 星(マイナビ仙台レディース)
ゴールを決めるセンスのような能力があるとしたらこの人がピカイチだろう。彼女のゴールにはある種の美しさがあるような気がする。


道上 彩花(アルビレックス新潟レディース)
5月16日の記事を見てほしい。彼女がいかに凄まじいパワーを持っているかを書いたつもりである。

2022-06-04

2021-22年間優秀選手賞(広島編)

 2022.6.1のニュースリリースで2021-22年間優秀選手賞27名が発表されている。

サンフレッチェ広島レジーナからは、

 MF 中嶋淑乃
 FW 上野真実

の2名が受賞した。 素晴らしい! 両選手、おめでとう!!

優勝のINAC神戸レオネッサが7名、
最多が浦和レッズレディースの8名、
日テレ・東京ヴェルディベレーザ4名、
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース2名、
マイナビ仙台レディース2名、
AC長野パルセイロ・レディース2名、の選出なので6位広島から2名の選出になったのはほぼ順当と言えるかも知れない。

 このブログは、5月4日のWEリーグ第11節(延期試合)から書き始めているので、評価が4試合分しかなく、到底年間成績の表彰というには程遠い。
だがそれでもでも一応、評価点の合計をしてみたのが以下である。

上野真実
27.5
中嶋淑乃
26.0

小川愛
25.0

柳瀬楓菜
24.5
木崎あおい
24.0
立花葉
23.5
中村楓    
23.0
佐山桃子    
23.0
谷口木乃実    
23.0
松原優菜    
23.0
福元美穂    
22.5
川島はるな    
22.5
塩田満彩    
18.0
大内梨央    
16.5
島袋奈美恵    
12.5
山口千尋    
11.0
近賀ゆかり    
11.0

 上位の2名は、図らずもリーグ選出選手と一致した。とうぜんだ。この二人の活躍が目覚ましかったことは衆目の一致するところである。
 ただ個人的にはこの2名に加えて小川愛か柳瀬楓菜を入れてほしかった。ボランチのこのふたりこそレジーナのエンジンだからである。

 しかしこうして総合順位を眺めてみると意外な結果にはなっていない気がする。川島はるなの順位が低いが、彼女の場合は年間全試合で採点するともっと上位に来るはずだ。前半戦での立役者は川島だったからだ。直近4試合ではチーム全体が激的に良くなったために相対的に下がってしまっただけのことである。

 塩田満彩はもう1試合出ていれば23.0以上になっただろう。塩田と大内梨央については成長期待のため評価点がやや甘かったが、特に塩田はよくできていたのは確かだと思う。

 守備陣についてはやはり不利であるのは否めない。試合内容が良ければ活躍の場面が少ないので評価を上げることができず悪ければ評価は下がってしまうのだ。少しゲタを履かせる必要があるかもしれない。

 近賀ゆかりに関しては5月14日に書いたのでぜひ読んでいただきたい。

 残念なのは島袋奈美恵、山口千尋である。出場機会が増えれば必ず結果が出せるはずの二人なのでめげずに頑張って欲しい。

 この中に名前のない選手たち、内田好美、木稲瑠那の再登場が待ち遠しいのはもとより、藤田七海、呉屋絵理子、久保田晴香に来年は期待がかかる。そして齋原みず稀はいったいどうしたのか。さらに巻胡花、森宙舞。早く観てみたい。

2022-05-23

2021-22 Yogibo WEリーグ 第22節 ■ S広島R 1−0 AC長野


 前半の終了間際、長野の三谷沙也加が負傷退場してしまった。これがこの試合のターニングポイントだった。
 前半は長野のハイプレスの強度がともすると広島を上回っており、双方ともに前線にボールを入れることができない展開となった。もし最終ライン付近でボールを奪われたら即失点のピンチになる。観ている側もヒリヒリするような恐ろしく緊張感の高い試合展開である。前節は大車輪の活躍を見せた小川愛がこの長野のハイプレスのため攻撃面で機能しなくなったのは衝撃だった。小笠原監督の術策にはまってしまった感があり、もはや絶体絶命なのかと青ざめたのである。カメレオンサッカー恐るべし。
 しかし38分、長野ゴール前の攻防で三谷沙也加が足首を痛めて負傷交代となる。広島の選手との接触ではないように見えたがどうなのだろう、いずれにしろ大事がないことを祈るのみである。そして程なく0対0のままハーフタイムとなった。
 後半が始まってこれまた驚くことになる。両チームともハイライン/ハイプレスのガチンコ対決だった前半とは打って変わって、双方が改めて相手の出方を探り合うかのような慎重な姿勢をとっている。両チームとも選手交代はないのに、これはどうしたことか。前半戦があまりにも激しい戦いであったがゆえに肉体も精神もスローダウンを求めたということかも知れない。しかし振り返ってみると三谷選手の退場以降はお互いが攻め込みあってチャンスを作るようになっており、それまでの均衡が崩れ始めていたとみることもできよう。三谷に変わって入った八坂芽依もハイプレスのハードワークはしっかり行っていたのだが、戦術の理解度や表現においては三谷に及ぶべくもなかったのか、そこはよくわからない。
 しかしともかく、長野のハイプレスが緩んでくれば、小川愛が自由に活動できる。小川が自由になれば柳瀬楓菜が輝きを増すのが今のレジーナだ。結果、押し込んでいく展開が増え、長野はロングボールに頼らざるを得なくなった。かくして大勢は決して、上野真実の頭の上にリフレクションのボールが落ちてくるという理屈では説明の難しい不思議なゴールが決まった。


 前回対戦は第9節、0−1で広島リードの90+2分に五嶋京香、90+3分に瀧澤千聖がゴールしてまさかまさかの大逆転。絶望の雰囲気が漂っていた長野Uスタジアムは一瞬のうちに歓喜のるつぼとなり、広島は眼の前が暗くなった。なぜこういうことが起こったのかは未だによくわからない。そして今節のこの展開である。それぞれその時点でのそれぞれの実力がそれぞれの結果を招じた、のかもしれないし、もはや実力に差はなく単なる運命の悪戯なのかも知れないが、どちらにせよ前節の新潟と同様、来期の対戦がどういう展開になるのか、楽しみでしかたがない。

GK福元美穂6.0長野にほとんどシュートを打たせないというみごとな結果を導いた。
RCB佐山桃子6.5股抜きを狙われて抜かせなかっただけでなく機転の効いたプレーが随所にみられた。
LCB中村楓6.5長野の決定機をブロックしたのみならず正確なフィードでチャンスメークもしていた。
RSB松原優菜5.5やはり左足のロングパスはこのチームにとって大きな武器だ。
LSB木崎あおい6.5ワクワクさせてくれる木崎あおいが戻ってきた。あのシュートが決まっていれば7.0。
DMF小川愛6.0前半は消えていた時間もあったが彼女が活きればチームが活きる。
DMF柳瀬楓菜6.0危険なミスもあったがそれを上回ってあり余る活躍。
RWG川島はるな5.5気の毒だが期待値がぶち高いのでその分評価点が常に下がってしまう。
LWG中嶋淑乃6.5再三のサイド突破もさることながら守備貢献度がとても高い。
OMF上野真実7.0得点王が取れるかもしれないという緊張を突き抜けたゴールだった。
CFW谷口木乃実5.5ポストプレーはどんどん上手くなっている。あとはフィニッシュするのみ。
RWG立花葉5.5目立つシーンこそなかったが可能性は感じさせてくれた。守備も良かった。
RSB塩田満彩6.0ロングスローからシュートの一連のプレーは見事だった。ロングシュートも打ってくれ。
LWG島袋奈美恵5.5時間は短かったが、中嶋の代わりに出ても遜色ない働きが期待できる。
DMF近賀ゆかり5.5この人が出てくればもう大丈夫という気にさせてくれる。

2022-05-17

2021-22 Yogibo WEリーグ 第21節

新潟 2 ー 2 広島

  残念ながら守備陣に厳しい点数になってしまう。もちろんGK福元を始めとした彼女たちの頑張りがあってのドローなのはわかっている。しかしながら前回対戦の第4節にやられた相手、道上彩花にまたしてもやられてしまった。しかも2ゴールもされたのはやはりいただけない。  センターバックの二人が彼女を見ておらず松原優菜がたったひとりで対応せざるを得なかったのが1点目。これがあったにもかかわらずまたしてもフリーでヘディングされた2点目はリーグ屈指のストライカーに対する警戒が不足だったと言わざるをえない。
 左のライン際でボールを持った道上選手に対して寄せていった広島側がボールを奪おうとしてなかなか奪えず最後は5人掛かりで取り囲んでようやく奪い取るというびっくりするシーンもあった。まさに敵ながら天晴というほかないが、それ以上に油断は大敵なのである。

 ただ先に書いたように成長過程にあるこのチームには波がある。この試合まで第17節以来5試合好調と緊張を続けてきたのだから疲れも出る頃だったと想像できる。最高点で波を平坦化できればTOP3と激烈な優勝争いができるようになるのはここへ至る5試合で証明されたので、その頂きへ向かって前進していって欲しい。

 この試合、勝ちを落とした試合ではあったが、いろいろな点で楽しめたゲームではあった。
 新潟は上尾野辺めぐみを左のウィングバックに入れてきた。広島の右サイドである。このサイドには川島はるながいる。川島はるなに自由にチャンスメークされてはたまらないというシフトだろうと思う。そしてこれが的中して新潟は中盤、特に左サイドが厚くなった。それをみた中村監督は、後半から川島と松原を交代させ立花と塩田を入れてきた。川島も松原も決して悪くはなかったが、選手の鮮度を上げて相手の策を裏返そうという意図が読み取れた。すると村松監督も動く。それまで左の低い位置にいた上尾野辺めぐみを前線に配置替えする。お互いが相手の裏をかいていこうとするベンチワークが実に興味深かった。個人的には川島はるなのファンタジックなプレーをもっと観たいのであるが、こういう事情なら仕方がない。
 またこのカード、不思議なものがある。前回対戦と今回いずれも引き分け、得点者も同じ、さらに得点経過も似通っている。道上彩花、広島にとっては天敵である。が、新潟の人々もまた上野真実を天敵だと思っているに違いない。来年はどのような決着になるか楽しみである。



GK福元美穂5.0佐山へのホスピタルパスとかあのシーンとかミスが目立ってしまった。
CB
中村楓5.5ゴロリ対策を頼みたかったのだが……残念だった。
CB
佐山桃子5.5攻撃参加がたくさん見られて新しい可能性を示した。
RSB松原優菜5.5悪くはなかったがこの試合では守備陣に甘い点数はつけられない。
LSB木崎あおい6.0結果も残せた。だけどもっと躍動できるはず。
DMF小川愛7.0レジーナ・トラ・レ・レジーナ! 彼女がいなかったら負けていた。
DMF柳瀬楓菜6.0パフォーマンスは下がっていない。好調は一時的なものではないようだ。
RWG川島はるな5.5途中交代は残念だったが、はるなシフトをとられては仕方がない。
LWG中嶋淑乃6.0中嶋対策をとってきた新潟だったがある程度はかわせていた。
OMF上野真実7.0シュートだけでなくいろいろな技を見せてくれた。覚醒は本物か。
CFW谷口木乃実5.5前線からの守備は相変わらず良いがボールタッチを増やしたい。
RWG立花葉5.5守備に注目していたが今回はやや不発気味。全体とのシンクロ?
RSB塩田満彩6.0股を抜かれためぐさんが呆然と君の背中を見ていた。
LWG山口千尋5.5チャンスは作ったが少し空回り気味。焦らなければ必ずゴールできる。
CFW大内梨央5.5時間が短い。もっと長くプレーするには何が必要かを掴んで欲しい。

2022-05-14

近賀ゆかりの大きさ

 オルカ鴨川はさぞかし彼女を手放したくなかっただろうと思う。近賀ゆかりはチームの顔なのである。中嶋淑乃にも戦力的には残ってほしかっただろうが、その意味では一介の若い選手に過ぎず、女子サッカーに関心のない人にとってみれば無名の人だという他ない。しかし近賀ゆかりはそうではない。彼女の名を知らない人でもW杯の優勝メンバーだと聞かされれば「ああ、あのときの……」となるのであり、とたんに見る目が変わってくる。鴨川は地理的な不利があるためこういうインパクトのある「顔」がどうしても必要なのだ。しかし近賀ゆかりになってみれば、現役選手である以上、プロリーグが発足するとなればそこに活躍の場を求めるのは当然だったに違いない。内心は忸怩たる思いもあっただろうと想うが鴨川を離れるのは已むを得なかった。 

 「顔」が欲しいという点では初年度の広島とて同じで、世間の耳目を引かなければ成功することができない。しかもその「顔」となる人が未だに現役選手だとなれば、チームの軸にもなれ、強化としても申し分なく、これ以上望むべくもない人材である。広島に来てくれたことに心から感謝する。そして彼女は「顔」としても選手としても大活躍をしてくれている。 

 私の認識は以上のものだった。しかしこの動画を観て彼女についての見かたが変わった。9分36秒からの数秒間である。


 積極的にアカデミーの選手たちの中へ入って彼女たちを表舞台に連れてくる、この姿を見て彼女の偉大さが初めてわかった。何気なく、ごくふつうに、日常的な雰囲気でこれができることが、このチームの雰囲気をどれだけ明るくしているか、計り知れない。 

 この日この時、近賀ゆかりが彼女たちに声を掛けなければ、彼女たちはトップチームの選手たちとともに同じ目線、同じ興奮の中ででメインスタンドを見上げることはない未来になっていたかもしれない。彼女たちはこの日ボールパーソンを務めた。その仕事は誰も注目しない裏方の仕事である。その裏方が裏方のまま家路につくのか、それともトップのプロ選手たちと一緒にメインスタンドへ挨拶したことを思い出しながら眠りにつくのか、その差はとてつもなく大きい。

 アカデミーについてはまた別に書きたいが、早ければ4年後、遅くても6年後にはアカデミーからトップに昇格する選手が生まれてくる、この映像を見てそう確信したのである。

2022-05-09

地獄の3月から大逆転の5月

 中断期間での補強が成功して格段にパワーアップしたエルフェンは脅威だと思っていたので、ここまでの完勝になるとは驚きだった。
 交代で入った立花と島袋が大活躍してくれたあたりはチーム全体の好調ぶりを表している。うまくいっているチームはいじりたくない。しかし先発以外のメンバも使いたい。しかもそれが一人や二人ではなく、ゴロゴロいる。さらに途中出場の選手がこれだけの結果を残したとなると……どうすればよいのか。中村監督の嬉しい悲鳴が聞こえるようである。


GK福元美穂5.5エルフェンのFWに寄せられてもむしろ引きつけるような落ち着きぶり。
DF中村楓5.5守備陣としては仕事が少ないほうがいいのだがその分評点が上げにくい。
DF佐山桃子5.5可能性のあるフィードがあった。もっと見せて欲しい。
RSB松原優菜6.5自分で上げたクロスを自分でゴールする左足には保険を掛けたくなる。
LSB木崎あおい5.5調子は上昇傾向だがまだ精度にむらがある。もっとやれるはず。
MF小川愛5.5好調レジーナに欠かせない存在だがミスからピンチを招いたシーンもあった。
MF柳瀬楓菜6.0やはり攻守に貢献度が高い。1ゴール取れればさらにブレークできるかも。
RWG川島はるな6.0ボール奪取に行くチャレンジが増えてきた。でもまだ能力全開状態ではない。
LWG中嶋淑乃6.5判定で1点損をしたが冷静でいられるメンタリティーが素晴らしい。
OMF上野真実7.0攻守に大車輪。決定力が急上昇。この調子を持続できれば……
CFW谷口木乃実5.5あのシュートは枠に行ってほしかった。難しいけどクリアしたい課題。
RWG立花葉6.5ゴールもさることながら予測の効いた守備が素晴らしかった。
RSB塩田満彩6.0破壊力を感じさせる見事なフィードを出していた。続けて欲しい。
MF近賀ゆかり5.5クロージャーとしての役割はしっかり果たした。
LWG島袋奈美恵7.0途中出場としてはこれ以上ない大活躍。次は先発で観たい。
OMF大内梨央5.5元気なプレーぶりは好感が持てるが、もっと貪欲にガンガンいくべき。